サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭｜リアクション

サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭

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　志波甲斐斗が、猫たちの傍らにレジ袋をどさりと置いた。
　ガサガサと取り出したるは、コンビニの猫用おやつ。自腹だが、サンマがお値打ち価格なことを考えれば、この程度の出費はむしろ安いくらいだ。
　サンマに向かっていた猫たちの何匹かが、ちらりと甲斐斗を見やる。
　けれど、その興味はまたすぐサンマの方へと向いてしまった。
（とても素敵な催し物ですが……猫の多いこの島では少々大変なようですね）
　もし次の機会があるなら、その時は対策も講じておいてもらえると良いのだが。
　――さておき。取り置きもしてもらっていることだし、しばらくは猫の相手に専念することにした。
　コンビニで買ってきた猫用ささみスティックを手に、サンマを狙う猫たちにゆっくりと迫っていく。
「こっちですよ、ほらほら」
　ぴく、と一匹の猫が彼を見た。
　甲斐斗はすかさず、ささみスティックをもう一本取り出した。
　二本のささみスティックをフリフリして誘えば、猫たちはそのまま甲斐斗のほうへと引き寄せられていく。
　とりあえず、これでサンマから引き離すことはできた。
　けれどなんというか、決め手に欠けている気がする。おやつもそう大量にあるわけではないし。
　マタタビでもあれば話は違うだろうけれど、流石にすぐ手に入るものでもない。「マタタビ持ってきたけどその間にサンマ食べられました」では、意味がないのだ。
　思案する甲斐斗の目が、風にあおられバサバサ音を立てるビニール袋を捉える。
　ピンときた。
「サンマさん、聞きたいことが」
「おう、どうした兄ちゃん！」
　ちょうど近くを通りがかったサンマさんに、食材梱包のガムテやビニール紐がないかを確認する甲斐斗。
　親切にもそのまま持ってきてくれている間に、手近なところにあった流木を調達。
　それらを組み合わせて出来上がったのは、ビニール袋の猫じゃらしだ。
（これでなんとかなるでしょうか）
　おやつからあぶれてしまった猫たちの前で、あっちへふりふり、こっちへふりふり。猫たちは夢中になって、あっちこっちへ揺れるビニール袋を追いかけている。

　――が、それも長くは続かなかった。
　一匹の猫の爪が、ビニール猫じゃらしを捉えた。
　あっという間にビリビリ引き裂かれ、見るも無残な有様にされてしまうビニール猫じゃらし。
　それだけなら、まだよかった。多少引き裂かれたくらいなら、じゃれつくのにもそう影響はない。
　けれど引き裂かれたビニール袋に、猫の手が引っかかってしまう。そこに折り悪く、猫と甲斐斗が上下に力を入れてしまい――
「おや」
　――ぶちっといった。
　ビニール紐が千切れてしまい、猫じゃらしがぽとりと落ちる。落っこちてしまった猫じゃらしは、そのまま猫たちによってぐっしゃぐしゃに遊ばれてしまった。
（困りましたね）
　つなぎなおすだけなら、結ぶなりすれば済む話。しかしビニール袋がぐちゃぐちゃになっていまった今、ただビニール袋をつなぎ直せばいいというわけでもない。
（ガムテープを丸めて玉にすれば、なんとか……？）
　なんてことを考えている彼に、「あの！」と呼びかける声が一つ。

「これどうぞ！」
　まだ使っていなかった猫じゃらしを、夏朝は甲斐斗へと差し出した。
　彼が猫たちを阻止する同士なのは、すぐにわかった。だって、わざわざコンビニ行って色々買ってきてたみたいだし。
「いいんですか？」
「うん、僕は他にもおもちゃ持ってるから」
　ボールに、毛糸玉に、ネズミのおもちゃ……まだまだ手持ちのおもちゃは沢山ある。
「ありがとうございます。後で必ず返します」
　夏朝の猫じゃらしを受け取った甲斐斗は、襲撃が落ち着くまでもうしばらく猫たちの相手をするのだった。

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