サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭｜リアクション

サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭

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「……あれ、駅は？」
　楡宮遠海は途方に暮れていた。
　鎌倉の自宅へ帰ろうと駅へ向かっていたはずが、気づけば迷子になっていたからだ。
　さっきまで街道沿いで人通りもあったはずが、今は周囲に人っ子一人居やしない。
　晩秋も近いこの頃、時おり吹きよせる寒風に身を震わせるのは、寒いばかりが理由ではない。
　そんな彼女に、歩みよる流線型のボディがスマートな影が一つ。
「よう、そこのお嬢ちゃん！　美味いサンマ、食べたくねえか？」
　サンマさんだった。
「サンマさん？　……って、え、サンマ？」
　そういえば、サンマさんからほのかに香ばしい匂いが漂っているような。
　気づくとなんだか、急にお腹が空いてきた。
「寝子ヶ浜で大秋刀魚祭をやってんだ！　どうだい！？」
「行きます！」
　さっきまでの心細さもどこへやら、案内されるまま遠海は寝子ヶ浜海岸へ。

◆
　無数に並んだ七輪の上で、じゅうじゅうとサンマが焼ける音。
　鼻をくすぐるどころか、胸をいっぱいに満たすほどの香ばしい匂い。
　塩焼き、素焼き、煮付けにお刺身つみれ汁――どこを見てもサンマ、サンマ、サンマ！
　暴力的な量のサンマが、海岸へやってきた遠海の目と耳と鼻に襲いかかる。
　今年はさんまが大漁でどうのこうのというサンマさんの言葉は、もう遠海の耳には届かない。
「――だからじゃんじゃん食べ……あれ？」
　サンマさんが気づいたときには、もう遠海は料理を提供するテントに向かっていた。
　まずは定番、塩焼きから。
　皮はこんがりパリっと、中身はふっくらジューシーな塩焼きをを大根おろしでいただけば、もう最高。
　幸せいっぱいに顔をほころばせ、次は素焼きに蒲焼きに……と片っ端から食べる、食べる。
　すらりとしたスレンダーボディの、いったいどこにそんなに入るのだろうか。

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