サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭｜リアクション

サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭

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「本当に猫さん達来たー！？」
　寝子ヶ浜に押し寄せる大量の猫を前に、恵御納夏朝は思わず叫んでいた。
　もしかしたら猫がたくさんやって来るかも、なんて思って来てみたら。
　たくさん来るどころではなく、たくさん押し寄せていた。
（こんなに沢山……猫の楽園……）
　それこそ猫じゃらしを前にした猫のごとく、ふらふらと猫の群れへと歩み寄っていく夏朝。
　その目の前で塩焼きが一つ、襲来した猫たちによってかっさらわれていく。
「ああっ！？」
　サンマを奪われた誰かの声に、ハッと我に返る夏朝。
　猫の楽園とか、そんなこと言ってる場合じゃない。サンマと皆の楽しみと、そして猫を守らなければ……！
　サンマを取られて怒った人とか、塩焼きの塩分とか食べ過ぎから！
　こんなこともあろうかと、という訳ではないけれど。ちょうど猫用のおもちゃやごはん、おやつを買ってきたばかりだ。役立ててみよう！
（本当は内緒で飼ってる猫さん用だけど……仕方ない！）
「ほら、『にゅ～る』だよ～」
　まず取り出したのは、スティックタイプの猫おやつ。どんなに不機嫌な猫でも、飼い主がこのおやつの名前を口にしただけで飛んでくる……なんて噂があるくらい人気の一品だ。
　何匹かの猫が、ぴくりと反応する。
　それまでサンマに向かっていたのが、くるっと方向転換して夏朝に一直線！　効果はばつぐんだ！
「他にもあるから、落ちついて順番にね？」
　我先にとにゅ～るのスティックに群がる猫たちを撫でもふしながら、にゅ～るの残りを開封していく。
　あっという間になくなってしまいそうな食いつきっぷりに、夏朝は他のおやつも出すことにした。
　定番の猫缶に、ウェットフード。にゅ～るにありつけなかった猫たちが、そっちに興味を移らせる。
（満足してくれるかな？）
　ごはんを食べる猫たちを見つめながら、そっと隙を見てもふもふする夏朝。
　その視界の端に、猫用ごはんにそっぽを向いて去っていく猫の後ろ姿が見えた。
「待って待って！　ほら！」
　慌てて取り出したのは、猫用の釣り竿風おもちゃ。手首のスナップをきかせれば、釣り糸からぶらさがった小魚のおもちゃがふりふり揺れる。
「おいでー？」
　立ち止まって、ふりふりを見つめる猫。
　やがて「もう我慢できない！」とばかりに、小魚めがけて猫まっしぐら。
　一心不乱に小魚をてしてし猫パンチする様子に、目的も忘れて頬を緩ませてしまう夏朝だった。
　
◆
　お腹が苦しくなりそうな気配を感じて、アリサは次の料理に並びかけていた足を止めた。
（これ以上はまずいかな……？）
　帳尻合わせにいったいどれほどの努力を要するのか、今の時点でもうかなり怖い。
　明日以降を思って戦々恐々とするアリサの耳に、「落ち着けお前ら！」というサンマさんの声が届いた。
　見れば、サンマさんが大量の猫にモテモテになっている。
　会場にずっといてサンマの匂いが染み付いているうえに、あの見た目だ。
　猫を惹きつけるのも当然だろう。
　……それにしたって、ずいぶん猫が多いような。
　今しがた、アリサの足元を四、五匹通り過ぎていったし。
（猫ちゃんたちもサンマ食べたくて来たのかな？）
　屋外でこれだけの規模でやっているのだから、匂いをかぎつけてやって来てもおかしくない。
　でも塩分が多いから、猫の健康には良くないだろうし。
　なんてぼんやり考えていると、一人のおじいちゃん――雨宮草太郎がいそいそと猫缶を開けているのが目に入った。
「おじいちゃん、あたしも猫ちゃんたちに猫缶あげていい？」
　もちろんだよ、ともらった猫缶をあけると、猫たちはさっそくアリサのほうにも寄ってくる。
「猫ちゃんたちー？　サンマは塩分取りすぎになっちゃうからこっちで我慢ね」
　単に目の前のエサに興味が移ったのか、それとも言葉が通じたのか。
　寄ってきた猫ちゃんたちは、お皿にあけた猫缶を食べはじめる。
　アリサはそんな猫たちの背中や頭を優しくなでて、もふもふの感触を満喫するのだった。

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