サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭｜リアクション

サンマさんプレゼンツ・寝子ヶ浜大秋刀魚祭

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　猫に囲まれたサンマさんに誘われて、秋刀魚祭りへとやってきた真境名アリサ。
　サンマの焼ける音に、あたりを漂う香ばしくも脂のとける甘い香り。
　否が応でも食欲を刺激されて、ごくりと喉が鳴ってしまう。
　かぶりつきたい。そして一緒にビールをぐいっとやれたら――
（――最高よね）
　確信があった。
　今すぐにでもそうしたい。だけど、理性がソレにまったをかける。
　なぜって、アリサの仕事は水着ガールズバーのキャスト。スタイル維持は欠かせない。
　欲望のおもむくままサンマとビールを味わえば、必ずしっぺがえしを受けることになる。
（でも……）
　塩焼きのテントを未練がましく見やるアリサの前を、塩焼きのみならず照り焼き、
（ちょっとくらいなら……）
　さらにお刺身にカルパッチョ、
（ちょっとなら……）
　竜田揚げに炊き込みご飯etcを手にした人々が過ぎていく。皆楽しそうで、そしてなによりサンマが美味しそう。
　そして何度めかの塩焼きが目の前を通り過ぎていった、その時。
　よし、アリサは決意した。
（後でキッチリ帳尻合わせよ）
　誘惑に負けることを。

　そうと決まれば、食欲が求めるままに。
　とりあえず缶ビール片手に、定番の塩焼きにかぶりつくことにした。
　薬味にたっぷりのもみじおろしをつけて、これをビールでゴクゴクやれば――
「――最っ高だね！」
　あっという間に平らげて、お次はお刺身、その次は照り焼きに舌鼓を打つ。
　食事が進めば、お酒も進むというもので。缶ビールはあっという間に空になり、気づけばドンドン新しいのをあけてしまっていた。
（調子に乗って食べすぎないようにしないと……）
　と我に返るアリサ。
　これ何本目だっけ。この目の前の中華風の蒸し焼き、何皿目だっけ。
　後で帳尻を合わせるつもりだけれど、そもそも今どのくらいカロリーとか諸々がアレでソレだったっけ？
　しばし、手が止まる。
　けれど悲しいかな、目の前にはあっつあつで脂がのったふっくら柔らかな蒸し焼き。
　いつまでも手を出さずにいるなんて、とてもじゃないができやしない。
　後のことが怖いけど、いやだからこそやめられない！
　
◆
　にゃーご、と足元で声がした。
　一匹の猫が遠海を、いや、遠海が食べようとしているお刺身をじーっと物欲しそうに見上げていた。
　きっと、サンマの香りにつられてきたのだろう。
「……ちょっとだけね」
　くすっと微笑む遠海。お刺身をいくつか小さな皿に取り、猫にわけてあげた。
　お礼を言うように一声鳴いて、猫はお刺身を食べ始めた。それに気づいた猫がもう一匹、また一匹とやってくる。
　そんな猫たちを撫でたりして遊ぶ遠海は、ふとあることに気付いた。
（猫、多くない？）
　どこを見ても、必ず数匹は居るような。

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