お猫様パタパタ、寝子島神社お掃除大作戦！｜リアクション

お猫様パタパタ、寝子島神社お掃除大作戦！

○お猫さまを探せ！

　寝子高二年の青山絢は、従姉の水谷真優理と共にシーサイドタウンのマンションで暮らしています。
　真優理は星ヶ丘の超高級ホテル「ステッラ・デッラ・コリーナ」で働いていて、隅々にまで行き届いた心配りができる仕事ぶりの素敵な美人さんなのですが……。
　この日二人は、寝子島神社の近くを歩いていました。
　すると、何やら猫耳をつけた人たちが猫のしっぽみたいなものを持って動かしているのが見えました。
「ん？　何か面白そうなことをしてる……絢ちゃん、いこ」
　と言うが早いか、真優理はもう神社の方へ向かっていました。
　この前、20代に永遠の別れを告げたばかりとは思えぬこど……もとい、可愛らしさです。
「こんにちは。お猫様パタパタをしていかれませんか？」
　巫女さんがこちらに気づいて、声をかけてくれました。　
「お猫様パタパタ？」
　巫女さん──神楽舞の説明を聞き、真優理は目を輝かせました。
「猫や猫の格好をした人をパタパタするとご利益があるのね！」
「よかったらどうぞ」
　舞がはたきと共に、猫耳を渡してくれました。　
「ありがとうございます」
　真優理はためらいなく猫耳をつけ、ノリノリで、
「にゃーん」
　と絢に向かって招き猫のポーズを取りました。
　一見、大人可愛い系の美人さんだけど、ちょっと残念な気がしないでもありません。
（……この前、30歳になったんだよね？）
　とてもそうは見えないはしゃぎぶりで、見ている絢のほうが赤面してしまいそうでした。

「……可愛い猫ちゃんがいるね」
　話をそらすように、絢は神社にいる猫に視線を向けます。
「よーし、パタパタしてあげる！」
　さっそくはたきを持って向かう真優理ですが。
　ササッ。
「……あれ？　待ってよ！」
　猫たちは近づくと逃げてしまいます。
「普段はもっと人懐こい気がするんだけど……警戒されてる？」
　サササッ。
　追いかけると猫たちは軒下にもぐりこんでしまい、真優理はどうしたものかと首を傾げました。
　パシャッ。
　何か音がしたのに気づいてそちらを見ると、従妹の絢がそんな真優理の様子をしっかりスマホで写していました。
「絢ちゃんったら、いつものお返し？」
　可愛らしい従妹が大好きな真優理は、しょっちゅう絢の姿を撮影しているのです。
「そういうわけじゃないけど、可愛らしかったから」
　そういう気持ちもちょっとはあったかもしれませんが。絢も元々写真を撮るのが好きなのです。
　いろんな事情で、封印していたこともありましたが──。
「どうしたらパタパタさせてくれるかな……」
　絢はしばらく考えていましたが。
「絢ちゃん？」
「そうだ、ちょっと待ってて」
　スマホをしまうと、絢は土産物店へ向かいます。

　　掃除を終えた夏朝は“猫のしっぽハタキ”を手に猫さん達を探していました。
「今日は何故か見当たらないね……」
　普段たくさんいるのに、と首を傾げていた夏朝は、いいことを思いついて土産物屋へ向かいました。
「「猫のおもちゃをください」」
　思いがけず声がハモり、絢と夏朝は顔を見合わせて。
「「あ、お先にどうぞ」」
　また言葉がかぶってしまって。
　どちらからともなく笑顔になったのでした。
　

このページにイラストを設定する