お猫様パタパタ、寝子島神社お掃除大作戦！｜リアクション

お猫様パタパタ、寝子島神社お掃除大作戦！

○隠れお猫様の掃除

（黒々綿々……そんなのがいるんだ）
　舞の説明を受けて、恵御納夏朝はいよいよ掃除を始めました。
　大の猫好きで、神社にも猫さん目当てで来ることが多い夏朝にとって、これは願ってもないイベントでした。
「隠れお猫様も本物猫さんも、パタパタしてみたい！」
　本当は真っ先に本物猫さんのところへ飛んでいきたいところですが、まずは掃除を終わらせてから、と我慢です。
「隠れお猫様、どこかな？」
　草むらの中や手水場等、色んな所を探してみます。
　そこへ、社殿からまゆらが出てきました。
　手水場のお猫様の模様やら、草むらやら、そういった怪しそうな場所を適当に見て回っています。
　ふと二人の目が合いました。
「ありましたか？」
　夏朝がまゆらに声をかけます。
「こっちはないですね……」
　二人は顔を見合わせ、また探し始めます。
「あっ、あった！」
　草むらをかき分けていた夏朝が声をあげました。
「こんなところに」
　近くにいたまゆらもやってきて、一緒にお猫様の像を磨き始めました。
（（お猫様、かわいい～））
　口に出さなくても二人は同じことを思っていました。
　汚れが落ちると、夏朝は仕上げに“猫のしっぽハタキ”でパタパタ丁寧に掃除します。

「さて次は……石段を見てみようかな」
　立ち上がった夏朝は、石段の途中に黒い綿のようなものが動いているのを見つけました。
「あれ？　何か怪しいものが……」
　まゆらもそれを見つけていました。
「何だろう」
　近づくと、黒いものはこちらに擦り寄るように傍にきて。
「何だか知らないけど可愛い」
　思わず手を伸ばし、なでなでするまゆら。
「何か物ほしそうな気がする……」
　なんとなくそんな気がしてつぶやくと。
「これ……さっき説明があった『黒々綿々』……？　確か、甘い物が好きなんだよね」
　夏朝が言いました。
「ああ……、甘いもの……」
　二人は同時に、ポケットをさぐり。
「持ってきたコンペイトウをあげるから、その後ろにある物を見せてくれるかな？」
　夏朝はコンペイトウを。
「飴玉、食べる？」
　まゆらは飴玉を差し出したのでした。
　黒々綿々たちは一斉にコンペイトウと飴玉に群がります。
　みるみるうちにコンペイトウと飴玉は消えていき。
　見ていると、不思議に幸せな気分になります。
「あっ、お猫様だ！」　
　石段の隅に、小さなお猫様が彫られていました。
「……わたわたさん、って呼んでいいかな？　掃除を手伝ってくれるなら、喜んでコンペイトウをあげるよ」
　夏朝の言葉に応えるように、黒々綿々はお猫様を綺麗にしていくのでした。
「ありがとう、わたわたさん」
　
　一通り掃除が終えて、夏朝は言いました。
「わたわたさん達、厄を運ぶ仕事の途中なんだよね。しっぽハタキでパタパタしてもいいかな？」
　黒々綿々たちは同意するようにすり寄ってきました。
　パタパタ……
「厄掃除おつかれさま」
　夏朝とまゆらは感謝を込めて、しっぽハタキで黒々綿々たちをパタパタしました。
　すると、心がほっこり温かくなったような気分になったのでした。

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