【寝子祭2nd】『BAROQUE:CODE』カフェ｜リアクション

【寝子祭2nd】『BAROQUE:CODE』カフェ

　迎えた寝子祭当日。
　前日にカフェとなる教室から余分な机は運び出したりと大雑把な設営は終えていた為、後は残りを済ませて完成させるだけだ。

「奈津樹君。ごめん、ちょっとこれ持ち上げるの手伝って」
「解った」

　入口近くでパンフレットを渡す為のスペースの準備をしていた奈津樹は、レイに呼びかけられその手伝いをしに向かう。
　どうやら機材を大きな机の上に設置しようとしているのだが、一人では持ち上がらないようだ。

「よいしょっと……。ふぅ、ありがとう」
「いや、構わない。……ところで、真と綴先輩は？」

　二人で何とか機材を机の上に持ち上げた後、肩を回しながら教室内を見てみると座り込んで作業をしているスグリはいるものの真と柚枝の姿が見えない事に奈津樹は気付いた。

「あの二人なら奥だよ」

　奈津樹が声をした方を向けばレイ達の会話が聞こえたのかスグリが作業の手を止めて二人の方へ顔を上げていた。
　奥と言うのは教室の隅に設営された飲み物の作成場所とスタッフルームを兼ねている仕切りの向こうのスペースの事だろう。
　レイと奈津樹が耳を澄ませてみれば、確かにスグリの言う通りに真と柚枝の声が微かに聞こえるようだ。

「真クンが柚枝センパイをキチンと女の子にするって張り切っててネ」

　なるほどとスグリの話を聞いて奈津樹とレイは納得して頷いた。
　レイを除いた四人はゲーム内に出てくるキャラクターのコスプレをして接客する事になっているのだが、柚枝達の担当は女子なのだ。
　真は学校にも女生徒の制服を着て通っている程女装に精通している。どうやら自分のみならず柚枝の恰好も本気を出して仕上げようとしているという事のようだ。

「ねぇ、いなりん」
「ん、なぁに？」
「何で胸、女の子みたいになってるの？」
「あぁ、これ？　普段はここまでせえへんねんけどね。コスプレっちゅーことやし折角やったら一杯の人に来てもらいたいしって事で、目立つようにちょい盛ったろと思うてね」

　そう言って真が嫋やかに笑う。
　白く透き通った肌に、黒く真っ直ぐな美しい髪を持ったマドンナ的存在。それが真が扮する宇上・真里亞というキャラクターだ。
　
　今、柚枝の目の前にいるのは正にその宇上・真里亞そのままだ。
　寝子高の物とは違えど着ているのは高校の制服には違いない。だが、普段の真とは余りにも違う。それは胸を盛ったりメイクをしていたりという違いの所為もあるがそれ以上に雰囲気が変わっているのだ。

「よし。僕はこれでええね。じゃあ、次は柚枝さんの番といこか」
「えっ？」

　メイク道具を片手にニコォと笑う真。その笑顔は何かヤバいと感じる柚枝。
　だけど、恐らくは逃がして貰えない。最早覚悟を決めるしかないのだ。

「だぁいじょうぶ。柚枝さんも……ちゃぁんと女の子にしたるから、ね？」

　柚枝の頬を両手で挟んで笑う真は、ゲームよりもホラーだったとは後の柚枝談である。

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