【寝子祭2nd】陸上部、出店！ ―『カフェ・アスリート』―｜リアクション

【寝子祭2nd】陸上部、出店！ ―『カフェ・アスリート』―

「さぁ、はりきっていくにー！！」
　と気合の入った侑は、接客に会計にとフル回転である。一方、莉鳥も普段の素っ気なさが薄れ、柔らかい笑みで接客している。
　だが、時間がたつにつれお客さんも増えてくる。侑は普段通りはじける元気な笑顔だが、内心ちょっと慌てていた。
（ひゃーっ？！　会計やって、クッキー運んで……。ちょっと目が回りそうだにー！　あー、クッキーおいしそうぉ……）
　お菓子が大好きな彼女はつい食べたいな～、と思ってしまったが内心で首を振った。
（ダメダメ！試作とかでいっぱい食べたしもうちょいで休憩だー！　頑張れ、ウチッ！！　ファイトだにー！）
　一見、笑顔で給仕と会計をこなしているように見える侑。それ故に頼られてしまっているのかもしれない。
　一方の莉鳥は、注文を聞き、正確に調理班へと伝えていた。勿論、合間に会計に入ったりもする。
「ご注文はお決まりでしょうか？」
「ホットドッグとサンドウィッチを１つずつ。飲み物はコーヒー２つで」
　お客さんの注文をメモし、莉鳥は「かしこまりました」と一礼してオーダーを伝えに行く。その時、ふと蘇ったのはいつかの光景。
（そういえば、調理班にいたら活躍しそうな先輩がいたわよね……）
　ちょっと忙しくなってきた調理班の様子を眺め、莉鳥はその先輩がここにいたら大活躍していたかもしれない、と考えてしまった。

　しばらくして、ちらほらとお客さんの波も落ち着く。呼び込み班が頑張ったのか結構にぎわった『カフェ・アスリート』にちょっとゆったりした空気が流れる。
「お客さん少し落ち着いたにー。ちょっと疲れたかも……」
「もうちょっとで交代だ。がんばろう、七音さん」
　ちょっと疲れ気味の侑を拓郎が励ます。莉鳥がその光景を微笑ましそうにみていると……？
「お、やってるやってる。おつかれさん、大丈夫かー？」
「おーっす、引退組が邪魔しに来たぜー♪」
　優しい笑顔でやってきたのは、三年生の桐野正也と宇佐見望月だった。望月が「とりあえずリットル麦茶で」と言えば莉鳥が涼しい顔でオーダーを取り「ちょっ？！」と望月が止める一幕があるがそれはさておき。
「来て、くれたんですね。ご注文はお決まりですか？」
　拓郎がぱっ、と表情を明るくして問えば、正也と望月はメニューに目を落とす。その１つ１つを読み正也が目を細めた。おすすめを問えば、拓郎は「全部美味しいです」と胸を張って答えるので迷ってしまう。
「今回も凝ったメニュー作れて良かったな。ほら、パンケーキのデザインとか細かいじゃん！」
　そうして指さしたのはパンケーキ。陸上部に関係する道具のシルエットを粉砂糖であしらった一品だ。
　それを注文し、莉鳥がオーダーを届けに行っている間、他愛もない会話を楽しむ。「誰が型紙作ったんだ？　まぁ七音じゃないよな……」なんて正也が呟けば侑が「酷いにぃ～」とジト目でにらみつけ、「別に悪い意味で言ったんじゃないって。ほら、七音は接客向きって言いたくてさ」と慌ててフォローする羽目になる。
「それ、１年生の子が……」
「実はうちも手伝ったに～♪」
　拓郎と侑が一年生と思わしき男の子を呼んで紹介すれば、正也と望月はその一年生と侑の２人を感心した目でみる。
（こうして工夫して、毎年重ねていくんだろうな）
　なんて望月は少し遠い目で用意された麦茶を飲んでいた。

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