ココロに隙間風、感じたら｜リアクション

ココロに隙間風、感じたら

○五十嵐尚輝の悩み

　御巫時子は、放課後、寝子高の理科室で五十嵐尚輝先生とコーヒーを飲んでいた。
「もうすぐハロウィンですね」
　時子は話しかける。
　尚輝先生が自分から話しかけてくることは少ないので、大抵時子のほうから話題を振っている。
「そうなんですか」
　尚輝先生は、何か他のことを考えているようなこともあるけれど、ちゃんと返事は返してくれる。
「仮装は生地を買って作ってる最中です。まだ先生には内緒です」
「……それは楽しみです」
（今日はちょっと上の空みたいですね）
　そう思っていると、急に尚輝先生が、
「実は……相談がありまして」
　と言いだしたので時子はちょっとびっくりした。
「えっ……？　いつもと逆ですね。私で何か役に立てれば嬉しいです」
（尚輝先生から相談されるなんて嬉しいですね）
　そう思いつつちょっと心配にもなる。
（恋愛相談だったりしたらどうしましょう……？）
　さすがに時子の気持ちは気づいていてくれると思いたい。

　そんな時子の思いも知らず、尚輝先生は話し始めた。
「最近スマホでＮＹＡＩＮというのを始めたのですが」　
「えっ、そうなんですか」
　今まで尚輝先生がスマホをいじっているのを見たことがない。
「連絡に便利だからと言われて……しかし、よくわからない人が勝手に友達登録されます。グループに入ったら通知がうるさいですし、面倒になって電源を切ったのですが後で見たらずいぶん未読がたまっていました」
「そうなんですか……」
「僕には向かないと思うんですが、アンインストールしてしまっていいでしょうか」　
「うーん、私もあまり詳しくないのですが。お友達が勧めてくれたんですよね」
　尚輝先生にとって一番良い方法を見つけたいと思い、時子は考える。
「そうです。やめると後で怒られるかもしれませんが」
　尚輝先生の答えに、時子は知っている知識をフル動員して答えた。
「知らない人が友達登録されるのは、設定を変えれば解決すると思います」
「そうなんですか」
「電源を切らなくても、通相手先ごとに通知をオフにすることができますよ」
「そんな機能があったんですね。なるほど……」
　尚輝先生は感心している。早速スマホを取り出して設定方法を調べ始めた。

「助かりました。御巫さんに相談してよかったです」
　解決したらしい様子に時子はほっとした。
「どういたしまして。相談してもらえるのって嬉しいですね。また何かあったら相談してください。出来る事なら協力しますしお手伝いもしますよ」
　そして時子は思うのだった。
（ＮＹＡＩＮ、私もお友達登録してもらえないでしょうか……）
　連絡を取らなくても、こうして学校にくればいつでも会えるのだけど。
　

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