【星幽塔】第五階層　結界塔防衛戦線｜リアクション

【星幽塔】第五階層　結界塔防衛戦線

向かい来る群れは絶望的な数の魔物を有していた。
「ん。あれが……」
　茶色メインの盗賊衣装をまとった恵御納夏朝はそれに対し、目を細めた。単体で勝つのは無理そうだ。
「うわっ、すごい数。よし、覚悟決めてやりますか」
　そう言ったのは白真白である。この層を守るだけではない。名を上げることも出来るだろう。
「戦いは苦手なのですが、ここは国を救うため戦うのですー」
　二人の横で言ったのはエロ・イーアールオー。
　三人はこの場で出会い、共闘することを誓ったのだ。
　あの群れは第一ウェーブだと推測される。
「僕は後方支援の方がむいてるような気がする」
　夏朝の戦闘スタイルは土礫の投てきメイン。遠距離から攻撃可能だ。
「はい！　私は切り込み隊長やるよ！」
　真白が元気良く挙手をする。
「んー、エロのろっこんは巨大化なのですがー」
「巨大化！？」
　真白が目を瞬かせる。夏朝が首を傾げた。
「結構……大きくなれる？」
「空まで届くくらいになれるのですー」
　三人は同時に空を見上げた。
　小型ワイバーンもこちらに狙いを定めているようだ。
「エロはあれの相手をするのですー！　皆は地上の敵に集中してもらえれば」
　三人は攻撃体勢を話し合い、群れの方へ体の向きを変えた。
「それじゃ、今度こそ、行くよ！」
　真白が言って、近くにいた聖騎士達へ視線を向ける。
「あなた達は塔を守ってて下さい」
「！　わかった」
　群れを前に気後れ気味だった聖騎士達が力強く首肯く。
　真白は黒いドレスを翻し、駆け出した。騎士の光でバイクを出現させ、エンジン音と共にアクセルを踏んだ。
　片方の手には斧が握られている。
「容赦しないよ！」
　バイクのスピードを落とさないまま、群れに突っ込んだ。斧で流れるように首や顔を狙い、切り裂く。
　ふと前方へ視線を向けると、ゴブリンシャーマン達が魔法発動の予備動作をしていた。
　一番厄介だ。バイクでも間に合わないだろう。
「っ！」
　真白は斧を真横に構え、
「はっ」
ブーメランの要領で投げる。斧の刃がシャーマン達をなぎ倒していった。
「やった！」
　すると、頭上でプチっと何かが潰れる音がした。
「あ」
　真白が見上げると、エロが小型ワイバーンを握りつぶしながらピースをしていた。
「任せるですー」
　空から急降下してくるワイバーン達を巨大化した手のひらで大量キャッチし、両手を合わせて捻り潰す。
「プチプチですー」
　無謀にも突っ込んで来るそれらを叩き落とし、足で踏み潰す。
「さあ、どんどん来るですー」
　その様子を確認しつつ、夏朝は真白とエロの横を抜けて来たワイバーンやゴブリンシャーマンへ土礫を投げつける魔法を発動させ、目を狙う。さらに追い打ちで戦輪でゴブリン達の足を切り裂いていく。
　もう少しで殲滅できる。そう感じた時、真白が戻ってきた。
「このまま鎧の修理に向かうよ！」
　後はエロと聖騎士達で何とかなりそうだ。夏朝がエロの方へ視線を向けると、彼女が親指を立てて、頷いた。
「！　だったら、僕は」
　夏朝は分隊へ声をかけ、魔土砲の修理へと向かった。
　やがて一ウエーブを壊滅に追い込むことに成功した。それでも、味方の負傷者や壊れてしまったものは多い。
「皆さん、修理開始ですー！」

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