【星幽塔】第九階層　アクア・マルシェで豪遊？ツアー！｜リアクション

【星幽塔】第九階層　アクア・マルシェで豪遊？ツアー！

＞甘い二人のアクア・マルシェ

　その日、綾辻綾花と早川珪はシーサイドタウンでデートを楽しんでいた。その最中、建物からでた途端、星幽塔へ転移してしまったらしい。
　衣服はすべてファンタジー小説に登場するような物へと変化していた。
「そういえば、前にもこんなことがあったな……。ここも星幽塔かい？」
「ええ。ここは第九階層で……」
　珪の問いかけに、綾花は頷いて自分の知識から情報を引き出す。だが、綾花もこのゴンドラで向かう海上マルシェは知らなかった。
（しかも、恋のお祭りが近いとのこと。なんだか素敵です）
　綾花がアクア・マルシェの様子を見ながら胸をときめかせていると、珪も興味深そうに見ていることに気づいた。
「よかったら、ここでデートの続き……しませんか？」
「あぁ。僕も同じことを考えていたんだ。行こう」
　二人はさっそくゴンドラに乗ってアクア・マルシェへと赴いた。

　ゴンドリエーラは、紫水晶を思わせる目をした老婆だった。彼女は年季の入った櫂で優雅に漕ぎ、美しい歌声でデートを盛り上げる。綾花と珪は隣り合って座り、その歌に聞きほれながらマルシェを眺めた。
　歌が終わったところで、綾花は食料品を買いたいと相談した。すると、ゴンドリエーラは「任せな」というと、色とりどりの野菜や果物が揃った船へと連れて行ってくれた。
　どれもこれも寝子島では見ない物ばかりだ。試食もできるとのことで珪と共にいくつかの野菜を試食する。よくみれば、後ろにはレストランとウッドデッキのような物が見える。店主の話を聞くと、どうやらゴンドラを降りてここで食事をとることもできそうだ。
「どうしますか？　食材をここで買って帰るのもいいと思うのですが……」
「そうだなぁ……。他にも見たい露店もあるしそうしようか」
　二人は真っ青なトマトに似た野菜やキャベツに見えて辛味の効いた物など複数購入すると次の露天へと向かった。
　伝統料理を食べたいといえば、ゴンドリエーレは頷いて案内してくれた。
　冷たく柔らかな練り飴をコーンに乗せた菓子、牛肉のような味わいの魚の串焼き、まるでプリンのような味わいのチーズなど寝子島では見ない食べ物は数多くあり、目移りしそうだった。その中でも興味深い物を選び、購入した。
　またレシピを問えば、快く教えてくれる。そのことに感謝しつつ、二人は買った料理を分け合って食べれば美味しさも膨らむというもの。
「これ、美味しいですね！」
「そうだな。ほら、この野菜、さっき買った物じゃないか？」
　仲睦まじい二人の様子に、ゴンドリエーラは優しい眼差しを向けた。

　食事を終え、一息吐いた所で綾花はラッピングされた可愛い菓子を取り出す。屋台を回っているさなかに買ったビスコッティロゼである。
「あの、珪さん。これ、よかったら……」
「ありがとう。では、僕からも」
　綾花からの贈り物を受け取った珪は、鞄からシックな包みに入った菓子を手渡す。ビスコッティロゼにもいろいろな味があるらしく、最近の流行りは花の風味が付いたものなのだとか。
　二人は送り合った菓子を手に、幸せをかみしめる。綾花はゴンドリエーレが席を外している間に、より珪に近寄る。
「珪さん、愛してます」
「僕も、だよ」
　耳元でそういえば、そっと珪も返して。どちらからともなく顔の影が重なった。

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