寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●私服：エントリーNo.12　天満七星、No.13　納十一

　さて、民族衣装といえば、我らが日本の「和服」だって負けてはいられない。
　ちょうど和服での出場となったふたりの男女が揃ってステージに現れる。
　ひとりは素敵な袴姿の少女、天満七星。
「こちらの私服は和服でございますが私の普段着でして。
　今となっては普段和服を着る方は減りつつありますわね」

　彼女を象徴する色である淡い紫色が、少女らしさの中に落ち着きを感じさせる。あしらわれているのは藤の花だろうか。重ね襟の青藤色が、やもすると大人びてしまいがちな印象を爽やかにしていた。
　黒く切りそろえられた髪がしとやかに肩にかかる。
「私の家は色々と旧い決まり事が残っていまして和服も日常的に使われていますの。
　こちらの服も、お父様が明治時代の学生服を参考にして、わざわざ発注して作ったものだそうですわ。他にも作られていまして、私の部屋にはこういった和服が何着もあります。お母様は私がこれを着ている姿をいたく気に入っているらしく、洋服を着ると少し残念そうな顔をなさいます」
　
　古い家柄のお嬢様である七星は、常日頃から背中を丸めたみっともない歩き方はしてはいけないと躾けられていて、立ち居振る舞いが美しい。
「お父様は厳しいです。お母様もちょっと厳しいです。
それでも、私に期待を寄せていただいているが故なのですから、私はその期待に答えていきたいと思っていますわ。たまに苦痛ですけれど、私の生き方ですの。やめませんわ」

「えらいね」と七星の隣で納十一は感心した声をあげた。
「俺んちは農園やってて、爺ちゃんとふたりぐらしでさ」
「まあ……そうですの」
　厳しいだなんて贅沢なことを言ってしまったかとすこし申し訳なく思い、七星は口元に手を当てる。
　もっとも十一は気にした風もなくにかっと笑うと、
「この和服は爺ちゃんがくれたものでかなりいいやつみたい。
　代々受け継いでるんだって！　意外と動きやすいよ！」と鉈をひと振り、見栄を切ってみせた。

　双葉アホ毛と日によって変わるハチマキ、それから可愛い笑顔がチャームポイントの十一。制服は家の納戸に眠っているためいつもはジャージ姿だが、和服だって着慣れたものだ。
　手にした鉈は、あくまで農作業用（だと信じたい）。

「じゃあ、ここで問題ね！　今日のハチマキの字は何でしょうか！」
「えっ……？」
　チチチチチチ……！
　間近で見ている七星も、この唐突な質問の答えがわからない。
　さきほどの、農園をやっているというヒントから導き出した答えは――、
「に、『人参』？」
「もっと文字数が多いよ」
「『高麗人参』？」
「もっと字画は少ないかもねー」
「では、『人参いっぽんおくれ』？」……だめだ、七星は人参から離れられない！
「はい時間切れー！」
　その前髪をはらりと分ければそこには、「寝子島高校」の文字！
「特別に爺ちゃんに書いてもらった！」

　その字があまりに達筆なので、七星は顔の前で嬉しそうに両手を合わせる。
「まあ……なんて素敵なお爺様でしょう！」
「そうなんだ！」
　誇りにしている祖父を誉められて、十一は顔いっぱいで笑顔をつくった。

　さあ、そろそろ締めの時間だ。
　二人は着物の裾を翻すように一回転し、こう、出番を締めくくった。
「皆様は和服はお好きですか？　私はこの生地の肌触りがとても気に入っていますわ」
「私服に和服ってめっきり減っちゃったけど、昔の知恵や和の心がたっぷり入ってる和服、みんなも着てほしいな！」

　もし、あなたが和服を着てみたいと思ったなら……
　……
　……
　ちょっと思いつかないので、いいお店があったら教えてください。