寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●私服：エントリーNo.11　シダ美穂戸

「シンチャオ　シダだよ」
　シダ美穂戸の明るい声が会場に響いた。
　ちなみに、シンチャオはベトナム語で「こんにちは」の意味。
　シダのお目当ては金ピカの制服で、もし自分が最優秀ねここー賞を手にしたら、金のアオザイにしてって頼んでみようと思っている。

「シダ　着てるの　アオザイ。
　ベトナムの　民族衣装。
　デップラム　かっこいい」

　民族衣装の中でもその美しさに定評のあるアオザイは、いまやベトナムの代名詞の一つといってもいい。
　シダは故郷の民族衣装であるこのアオザイを普段着にしている。
　裾の長い上衣は、ベトナムの温かい風土にあった薄布で仕立てられ、深いスリットが入っていて歩きやすい。下衣には、柄のないシンプルなズボンを組み合わせている。
　チャイナカラーと呼ばれる前あわせの襟もとなどがチャイナドレスに似ているが、シダに言わせれば、
「ヴァン　チャイナドレスに　すこし　似てる。けど　違う物だ」とのこと。

「もっと　教えよう。
　アオザイ作る時　20カ所以上採寸して　ピッタリに作る。
　だから　作ったあと　1センチも　太れない。
　ベトナム　スレンダー美人多いわけ　わかったか？
　アオザイ　着続けようとすれば　太れない」

　なんとアオザイにそんな秘密があろうとは。
　ベトナム美人をつくるのは、ベトナムの食文化だけではないということだ。
　継続される弛まぬ努力が、すべての美しさの秘訣なのかもしれない。
　――と、言葉にするのは簡単だが、実践するのは容易ではない。

「けっこう　きついぞ。
　シダ　特に　ハラペコ族だから　食べないわけに　いかない」
　と、シダの告白が続く。
「さっきも　やきそば20人前、からあげ50コ　食べた
　お祭り来たら　食べなきゃ　うそだもんな　ンゴーン（おいしい）」
　ここでさすがに失笑が漏れる。
　シダを知る友人たちは、彼女らしいと思ったことだろう。

「けど　ホンサオダウ（問題ない）。
　シダ　食べた分　動く。だから　平気だ」

　というや否や、シダは得意のベトナム格闘技、ボビナムの型を取り入れて、ジャンプにバック転、足を高くあげての連続キック！
　透けるアオザイの裾は蝶のように舞い、まるで天女の舞踏を見ているかのよう。
「お　Ｈな視線。
　透けてる　気になるか？
　これは　こういうもの。
　アオザイ　うすい　下着すけてて　正解。
　だから　いつも　いい下着つけてる。
　見えるとこまで　デザイン」
　シダはにかっと笑ってアピール。
「けど　まて　おすすめは　横のスリットだ。
　チャイナより深い。
　脇腹まで　見える。
　見ろ　シダの　ひきしまった腹筋」
　シュッと音を立てて繰り出されるハイキック。
　先ほどは翻る裾ばかり気になったけれど、本人にそう言われては、つい脇腹に目が行ってしまう。
「ボビナム　もっと見せる。
　すけたとこと　スリットから　筋肉の動きも　見ろ」
　見ている。観客たちは、アオザイとシダの肉体が作り出す美しさを、じっくりと堪能している。
「アオザイ　着こなし　シダの体　立ち居振る舞い。
　あわせて　ひとつ。
　これが　シダ。
　全部で　シダだ」

　こういってシダはウィンク。
　隙のないそのアピールに、割れんばかりの喝采が起こった。
　
　――もし、あなたがアオザイを着てみたいと思ったなら。
　シダがときどき店番をしているベトナム雑貨店　チュックマイマンに行ってみるといい。
　オーダーメイドのアオザイを作ってくれるそうだ。