寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

第２部　第２幕　私服パート

●私服：エントリーNo.01　響タルト

　会場が暗くなり、白いスポットライトが私服パートの一番手を待ち構える。
　現れたのは、響タルト。制服パートの間は、友人の北原みゆきとファッションチェックしつつ、後学のためにスケッチなどしていたのだが、いよいよ出番というわけだ。
　みんな、どんな私服だろうと期待する中、なんと彼女は制服で現れた。
　あれ？　私服パートだよね？　という動揺がざわざわと広がる。
　タルトはそれを見てほくそ笑んだ。
（予定通り。ただ出るだけじゃ面白くないでしょ！？）
　だから。

「変☆身！」

　タルトはその場でちょっとセクシーにしなを作ると、制服のスカートと上着をファサっと投げ捨てた。
　

　撮影係の民谷鋭二が激しくフラッシュを焚いた。が、鋭二ほか男子たちの期待に反して、制服の中から現れたのは、白いワンピース。ワインレッドの靴も可愛い。
「アピールポイントは猫耳と、この絶対領域です☆　にゃご～♪」
　と招き猫ポーズでウィンクすれば、腰で結ばれた茶色のリボンが、猫のしっぽみたいにふわり揺れる。
　手元に趣味の薄い本を持っているのは、ご愛嬌だ。
　予想外の早変わりに観客はわあっと盛り上がる。タルトのお蔭で、私服パートも出だし好調だ。

●私服：エントリーNo.02　八神修
　
　白のワンピースの次は白のスーツ。颯爽と歩いてきたのは八神修だ。
　高校生で白スーツが似合うなんてそうないんじゃないだろうか。
　端まで来ると修はその高級そうなジャケットを脱ぎ、爽やかに笑う。

　そのときパタパタと黄色いカナリアが飛んできて、あたりを旋回した。
　今日はずいぶん鳥に好かれているようだ。可愛らしい珍客に、わあっ、と歓声が上がる。
　修は、そのカナリアの正体に気づき、くすり、と笑った。
「……桜井か？」
　カナリア――桜井ラッセルは、修の肩に止まり、小首を傾げる。
「盛り上げるのはＮＧか？」そんな風に訊ねているかのようだった。
「……いや。こういうサプライズは歓迎さ」
　修はラッセルを肩に乗せたまま一礼すると、来たとき同様、颯爽とキャットウォークを戻って行った。

●私服：エントリーNo.03　篠崎響也

　トリエンなんてめんどくさい。そう思っていた。
　しかし、フジコちゃんの犬役はもっと御免だ。
　ただ歩けばいいだけだろ、と篠崎響也は飾ることなく自然な様子で背筋を伸ばして歩いた。
（……人が多いな……）
　気付けば、観客席の暗がりのなかに、無意識に最上るるかの姿を探している自分がいた。
（一生懸命なあいつが嫌いなわけじゃない……）
　ただ、どうしてあんなに一生懸命なのか、それに対してどうしていいかわからないだけなのだ。
　傷つけたくない。そう思うとつい距離を取ってしまう。
　るるかの姿は見つけられなかった。寂しいようなほっとしたような、複雑な思いが一瞬だけ胸をよぎった。
「……と。着こなしのポイント？　シンプルなのが好きだからいつもこんな感じかな。あとヴァイオリンは大抵、持ち歩いてる」