寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●制服：エントリーNo.48　道化崎大荒郎

　続いて道化崎大荒郎の名前が呼ばれる。
　ところが、誰も出てこない。強制参加だというのに、欠席だろうか。
　しばしの動揺のあと、結局彼は飛ばされて、次の小山内海が登場することになった。

●制服：エントリーNo.49　小山内海

「海ちゃん、緊張してるね」
　案内係を務めている友人の桜庭円に声をかけられ、海は素直に頷く。
『どうしよう、でるなんて　おもってなかったから、こころのじゅんびが』
　いつも持ち歩いてるスケッチブックに素早くそう記すと、子リスみたいな瞳で円を見る。
「うん。ドキドキするの、わかるよ」
　円はぽんと背中を叩いた。
「気休めだけどさ、ひとりじゃない、と思えばいいんじゃないかな。思い浮かべてごらんよ。海ちゃんのこと応援してる人、いっぱいいるよ」海が思い浮かべた顔を、円も思い浮かべたのだろう。そこでひとつウインクをして。「もちろん、ボクとにゃーくんもね」
　海はすこし照れくさそうに微笑んだ。
『ありがとう　がんばってくる』
「いってらっしゃい」

　とはいえ、まったく緊張しないというわけにはいかなくて。
　海はすこし照れながら、いつもよりは硬い足取りでキャットウォークを歩いた。
　キャットウォークの端まで行くと、くるりとゆっくり一回転。
　スカートがふわり。
　スカートと一緒に、腰につけたスケッチブックもふわり。

　
　上は白のカッターシャツに制服のベスト。
　下はチェックのスカートに白ストッキング。
　靴は女子高生らしいローファーだ。
　すこし太めのベルトを使って、腰の後ろにポーチ、両脇にスケッチブックを吊るしている。
　スケッチブックは、筆談のための必須アイテムなのだ。
　これが海のいつものスタイルだった。
　声はでないから、笑顔でアピールするしかない。
　小首をかしげれば、青いリボンが揺れる。
　名前が「海」だからだろうか、青色のアイテムを上手に指し色に使っているのが特徴的だ。

　観客席では、友人の桜月が拍手を送っていた。
（ふむ、ああいう風に歩いて回ればいいのか……私も参考にしよう）
　月も私服パートに出場予定なのだ。
（うん、いつも思うけれど彼女の雰囲気は良いね。
　今日寮へ帰ったら彼女用の服のデザインを考えてみよう）
　服飾デザインに興味のある月にとって、海の姿は創造力を刺激するもののようだ。

　こうして海は、たくさんの友人たちから温かい拍手を送られて、無事に出番を終えた。
　制服パートはいよいよ残りひとりだ。