寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●制服：エントリーNo.22 鞍掛宮雅、No.23 早坂恩

「強制参加だったわね、これ……」
　鞍掛宮雅は、パンフレットに挟まっていたカードに向かって眉をしかめていた。
「見事にハズレカードを引くなんて」
　全く面倒な話ではあるが、出なくてはいけないなら、みっともない姿を晒す訳にはいかない。
　控室に用意された鏡の前で、雅は身なりを整える。
　そんな雅に声を掛けてきた人物がいた。
「あらあら、そんな難しい顔してちゃいけないわ。折角のお祭りですもの、張り切って出ちゃいましょ」
　やわらかい口調。背格好は男性のようだが、その微笑み方や頬に添えられた指先の感じが、年上の女性を感じさせる。ふんわりとした長い髪は三つ編みに結われていて女性らしさに華を添えていた。
　彼の名は早坂恩。普通科の２年生だが、大病を患って留年したという過去を持つ。だからこそ身についたポジティブさや世話好きさゆえだろうか、不器用そうな雅を放っておけなかったのだ。
　訝しげに首を傾げた雅の胸元を見て、恩はにっこりほほ笑んだ。
「リボンのところだけ、男子用のネクタイにしているのね」
「そうね……あまり女の子らしい格好は似合わないでしょうし、趣味じゃないのよ」
「うふふ、かわいい」
「そう？　お世辞でも嬉しいわ」
　そういって肩をすくめた雅に、恩はぐっと顔を寄せた。
「ね。せっかく番号が並んだんだもの、これも何かの縁だわ。一緒に出ちゃわない？」
「え、なにを……」
「あっ、ほらほら。出番みたい。行きましょっ」
　恩はぱっと雅の腕を取る。
「ちょっ……」
　戸惑う雅のほっぺたを、恩はつんっと突いて笑った。
「笑顔、笑顔！」

　ライトに照らされたキャットウォーク。
　雅は笑顔こそ見せなかったものの、背筋を伸ばし顎を引いて堂々と歩いた。
　その隣を歩く恩は、視線が合った観客にひらひら手を振ったりして楽しそうだ。
　端まで来て、雅はちょっと恩を見た。なんだかんだ言って旧市街にあるお屋敷のお嬢様として育った雅は、先輩で男性の恩を立てるべきかと考えたのだ。
　恩は彼女にどうぞ、と促す。番号順で行きましょ、と。
　そこで、雅が先にアピールすることになった。

「そうね、祖母からは『女の子が易々と肌を見せるな』と言われてるので、肌を見せない様にしてるわ。だから、夏も冬もこの制服で通すつもりよ」
　襟元の赤以外は、ほぼ全身を黒で統一した雅の制服。暑くないの？　という声があっても不思議じゃない。
「それでも貫いてこその拘りじゃないの？」
　そこで一礼。視線を戻して一瞬だけ軽く微笑む。
　それから雅は恩を見て、微笑んでいたことを恥じるかのように、ぱっと元の表情を引き締めた。
　恩はそんな雅が可愛くって、うふふ、と笑みをこぼす。

「私の番ね。ポイントは……そうね、ピアスの色に合わせて他のアクセサリーとかをあわせてるかしら。小物の色とか気を遣うわよねぇ」
　たしかに、胸元や手首など、さりげないお洒落が素敵だ。
「制服に纏わるエピソードは、えーとそうねぇ……あ、一つだけあるわ。この制服、普通の状態だと背の高さに合わせてるから腰回りがちょっと緩かったのよね。だから、復学する前に自分であうように直しちゃったのよ。だからある意味コレも改造品って感じなのかしら」
　そう言って、いたずらした子どもみたいに舌を出すのが可愛らしい。
「みんなは感謝祭楽しんでいるかしら？　このイベントが３年に１度しかないなら、今日のこの日、思いっきり楽しんじゃいましょ♪」
　恩がウィンクすると、わあっと会場から拍手が起こった。
「ということで清き一票をお願いね！　ばいばーい！」
　恩は手を振ってキャットウォークをあとにした。
　続いて雅が身を翻すと、花開くようにふぁさっと靡く長い黒髪。
　それはとても印象的な美しさだった。