寝子高制服☆トリエンナーレ！｜リアクション

寝子高制服☆トリエンナーレ！

●制服：エントリーNo.18 音海なぎさ

　キャットウォークにオレンジブラウンの髪をした音海なぎさが登場した。
　柔和な顔つきで、男らしい険しさとは縁遠い彼は、女性と見間違えられることもしばしばある。今日だってそれでひと悶着。だからできるだけ背を伸ばして、男の子であることをアピールするように堂々と歩いてみる。
　……その企みは、あまりうまくいっていなかったかもしれないけれど。

「上着だけいつも青いケープに変えているよ。
　校則的には違反側なのだろうけれど、これがある方が落ち着くんです。
　普通の制服の上着も、持ってないわけじゃないんですけどね。
　とはいえ、これのせいで女子に見られる率が上がっているのかな、とも思います」
　あるいはそうなのかもしれない。それでも、となぎさは続ける。
「昔からの相棒のようなものなので、これからもこのケープを羽織って日常を暮らしていくよ」
　ふわりとケープの裾をはためかせて一回転すると、手にしていた救急箱をちょっと持ち上げ、
「君の傷を癒します♪　なんでもいってね♪」
　とにっこり。
　会場のあちこちで「あれは男、あれは男」と胸の内に言い聞かせる男子が幾人もいたことを、なぎさは知らない。そんな中で、添木牡丹がくすりと笑みを浮かべていた。
「ウフフ……可愛いですよ、なぎさくん。可愛いは正義です」

●制服：エントリーNo.19 志波武道

　登場した途端、一部の観客から異様な期待のまなざしで迎えられた者がいる。
　２年体育科、志波武道その人だ。
　彼は、すこし着崩した制服姿で現れた。
「一見すると普通にみえるでしょー、ちょっとだけ乱して着てるようにみえるでしょー、だがこれには俺の努力と経験とこだわりが盛りだくさんなんだＺＥ☆」
　彼の口調はあくまでも軽い。
「ズボンで見えない靴下にもデザインが施されてる物でさり気なお洒落、その日の気分で変える伊達眼鏡と腕時計、あとは……」
　とそこで、彼はちょっと間を置く。
「これは実際見せたほうが早いので……っと！」
　早くも上がる大きな拍手。

「さぁ括目せよ、これが俺の制服の真・骨・頂☆」

　会場は大いに沸いた。
　森蓮が「立派な体躯ですね」と感心してつぶやいている。
「出ました！　神速の脱ぎっぷり！」
　クラスメイトの佐々寿美礼から威勢のいい声がかかった。
「ありがとー☆　これぞ名付けて、神速脱ぎっ！
　まずはこの水着！
　これ色々なデザインをその日の気分や眼鏡、腕時計によって合わせなおしてるんだぜーい！
　リムあり無し、デジタルアナログ……小物一つから毎朝こだわりぬいているんだぜーい！
　ブーメランなんて全部同じに見える？　そこが俺の見えないお洒落心！！」
　武道の軽妙な語り口に、どっと沸く会場。
「そして最大のポイント……それはシャツのボタンの外れやすさ！　日常生活では決してとれず、脱衣の時にのみ瞬時にはずれてくれるこの一品を見つけ出すのにどれだけの店と試着を繰り返したか……！」
　武道はぐぐぐ、と拳を握ってその苦労を表現し。
「全部合わせてこれが俺の制服、勝負服ダッ！」
　ビシュッ！　と派手な演出音で、ばっちりとポーズを決めた。

　そのとき、ひとりの男子が観客席から血相を変えて舞台に飛び込んできた。
　武道の愛する弟くん、志波拓郎だ！
「あ、たー坊みてくれた？　いぇーい☆」
　アハハと笑う兄に対し、弟はと言えば、
「胸騒ぎがしたかと思えば……こんの恥さらし馬鹿兄貴―！！」
　げしーん！
「きゃー☆☆☆」

　……こうして兄は、ずるずると弟に回収されたのでありました。