おかしなアイランド・ウォーズ｜リアクション

おかしなアイランド・ウォーズ

　剣崎一心は目を疑った。隣に立つ桃井かんなも驚いているようだ。
　目の前に広がる景色はいつもの景色ではなかった。辺りには甘い匂いが漂っている。建物や地面、すべてがお菓子で出来ていたのだ。
「何これ？」
　かんなが困惑しながら呟いたので、一心は近くに転がっていた石ころを手に取ってみた。
　やはり甘い匂いがする。
　一心は思いきって、それを口の中へ放り込んだ。
「ん！」
「どう？」
「チョコレートっす！　味は大丈夫……むしろ美味しいっす。これなら桃井さんが食べても」
　ふと、気配を感じ、その方向へ視線を向ける。
「なんすか、あいつら！？」
　それはお菓子の箱だった。スーパーやコンビニで見かけるパッキーやニャリッツのパッケージ。それに足が生えて、迫ってくる。
「来るよっ」
　一心はかんなの前に出て、いつも持ち歩いている竹刀を構えた。
「さぁ、かかって来るっす！」
　その時、一心のろっこん、【武魂】が無意識に発動した。
「剣崎？」
「そばを離れるな」
　一心はかんなの前に出た。
　まずは相手の出方を伺う。しかし、パッキーがいきなり人をお菓子に変えるビームを放ってきた。
　一心はそのタイミングを狙い、
「はあっ！」
　思いっきり竹刀を振り下ろした。すると、ビームが粒子になって飛び散り、やがて消えた。どうやら、物理的に無効にできるようだ。
「行くぞー！」
　放たれるビームを竹刀でかき消しながら、走り、パッキーの箱に対し横から振り上げる。次に横にいたニャリッツには鋭い突きをお見舞いする。
地面に転がったパッキーとニャリッツはすぐに動かなくなった。
　と、その時。背後で短い悲鳴が聞こえた気がした。
　振り返ると、かんなのそばに、きのこの林の箱が迫っていた。
駆け出す。
「桃井さんっ」
　恐怖で足が竦んでしまっているようだ。
　幸いなことにきのこの林は動きが鈍い。お菓子に変えるビームが放たれたところで、一心はかんなに飛び掛かり、地面に転がって回避した。
「ごめん、桃井さん。怪我は？」
「剣崎は大丈夫？」
　一心は頷いて、素早く立ち上がった。
　手を引いて、駆け出した。

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