おかしなアイランド・ウォーズ｜リアクション

おかしなアイランド・ウォーズ

「も、もしかして、お菓子から逃げてる？」
　遠海が問うと、龍樹が頷いた。
「お前……じゃねえ、ねえちゃんも？」
　どうやら二人は同じ境遇らしかった。
「とりあえず、逃げようぜ！」
「ええ」
　二人は駆け出しながら作戦を練ることにした。
「一網打尽にする方法ねえかな？」
「たしかに一匹づつじゃ効率が悪いわね……あ！」
　二人は足を止めた。
　目の前にオレンジ色の川が流れていた。ジャンプで渡れるくらいの幅だが。
「お、これジュースだ！」
　すくって飲んでみると、フルーティなオレンジの香りがした。
「！　ここに落とすっていうのはどう？」
「それ良いな！」
　と、近くの茂みから何かが飛び出してきた。身構える遠海と龍樹。
　しかしそれは、お菓子人ではなく、二人連れの男女だった。一心と、かんなである。
「早く逃げた方がいい。あっちから来るぞ」
　一心がそう言うと、かんなも頷く。
「実は今から」
　遠海が説明すると、
「それなら、俺達があいつらを引き付けながら逃げるから、その隙に落とせ」
「よし、じゃあ何か投げられるもの探そうぜ」
「そうね。さっき、シュークリームの小岩があったけど、使えるかもしれないわ」
　作戦は決まった。
　一心とかんなは引き続き逃げて、お菓子人の目をそらす。
　走って行く二人の背中を見届けた遠海と龍樹は茂みの中からお菓子人達が川に近づくのを見守る。
「よーし、行くぜ、ねえちゃん！」
「うん、やるよ！」
　集めていたシュークリーム小岩を川の近くに立ったお菓子人達に次々と投げていく。
　近距離から投げるので、命中率はかなり良い。
「いいぞー、いけー！」
　オレンジ色の川にぼとぼとと落ち始め、速い流れに逆らえず下流へと消えていく。
「！　あなた、危ない！」
「うお！」
　最後の悪あがき、ビームをすれすれで避け、二人は最後の一匹に小岩を命中させた。
「やったぜ！」
「全部倒した！？　てことは思う存分お菓子を」
　食べられる、と言おうとしたところで遠海と龍樹は寝子島に立っていた。

　一匹だけ追いかけてきたお菓子人、一心はかんなの前に出る。
「桃井さんには指一本触れさせない！　俺の大切な子は、絶対に、守りきってみせる！」
　再びお菓子に変えるビームを撃ってこようとしている。しかし、動きは遅い。振りかぶって、
「めーん！」
　正面から竹刀を振り下ろした。
　箱はひしゃげ、そのまま動かなくなったのだった。

　それと同時に視界が歪み、気づくと元の場所に立っていた。
「……なんだったんす？」
「さあ……」
　ふと桃井さんの横顔を見て、先ほどの戦いの記憶が蘇ってきた。
（なんだかとんでもない事を言ってしまった気がするので気になるっす……！）
　そうは思ったが、かんなの様子は変わらない。動揺はしているようだが。
「か、帰るっすか」
「あ、うん。剣崎」
「なんす？」
「ありがと」
　かんなはそう言って、歩き出した。一心も慌てて着いていく。

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