おかしなアイランド・ウォーズ｜リアクション

おかしなアイランド・ウォーズ

　白石龍樹は驚いて口を半開きにした。今の今まで寝子島にいたはずなのに、気づいたら何もかもがお菓子で出来た世界に立っていた。
「……うお！？　お菓子の国だっ、いつもは食べ過ぎちゃダメってかあちゃんに言われて思う存分食えないけど、これなら食べ放題だ！　わーい！」
　地面に生えていたチョコレートの草やパンケーキで出来た葉っぱを両手に持ち、頬張る。
　お菓子に夢中になっていると、パッキーやニャリッツの箱がこちらに向かって走ってくるではないか。
「え！？」
　どうやら、龍樹は狙われているようだ。
「くそー、食われてたまるかよ！」
　慌てて走り出した。

　楡宮遠海は目の前の光景に呆然とした。いつものように道に迷っていて、そうしたらいつの間にか知らない場所に。
　そこは木々に囲まれた自然豊かな場所であったが、漂う空気というか匂いが甘ったるかった。
「あれ、まさか」
　遠海は近くの木をつついてみる。
「！」
　それはクッキーとビスケットでできているようだった。細い枝と葉っぱはチョコレートのよう。
「お菓子で出来てる！」
　指につけたチョコレートを舐めてみると、間違いなくミルクチョコの味だった。
「あ……」
　遠海の中で何かが弾けた。パーンと理性が吹っ飛んだ。
「お菓子！　食べ放題！？」
　早速木の幹の皮。つまり薄いクッキーを剥がして口に運び、チョコレートの枝と葉っぱを両手に持って平らげる。
「んー、最高っ」
　クッキーを噛み砕く歯ごたえ。口中に広がる甘味。甘くも香ばしい香りが鼻腔を突き抜ける。
　遠海は食べることに夢中だった。夢中になりすぎた。
　背後からお菓子人が迫っていることにも気づかず。
　ふと複数の気配を感じて顔を上げると、
「！？」
　いつの間にかお菓子人に囲まれてしまっていた。
　パッキー、ニャリッツを先頭に遠海に迫ってくる。
「えっ、ええっ」
　慌てた時である。足元に、お菓子人が放ったビームが迸った。
「っ……！」
　とっさに伏せたからよかったものの、恐らくあれに、当たるとヤバい。
　お菓子人達の隙をついて、木々の間を駆け出した。
「はぁはぁっ」
　途中大きな花が咲いていたので、走りながら花びらをむしりとる。
「んむっ、これマジパン！」
　岩がごろごろ転がる道へ出たのでその岩を口に運んでみる。
「さくさくシュークリーム！」
　そんなことをしていると、追いかけてくるお菓子人達の数が増えてきたような。
　と、その時。
　再び駆け出そうとしたところで、誰かとぶつかりそうになった。
「！」
　逃げ回っていた龍樹だった。

このページにイラストを設定する