夢のふくびきや、三たび｜リアクション

夢のふくびきや、三たび

突如現れたふくびきやなる店に入った恵御納夏朝は、店主に言われるまま、がらがらを回した。
　出た目は『４』。
　そして、気がつくと、夏朝は現代都市を一望できる隠れ家にいた。
　高層マンションだろうか。窓の外に見えるのは大都市の夜景である。
　戸惑いはしたが、すぐに自分の状況を思い出す。
　ここでの夏朝の名前は怪盗『ミケ・エミーナ』。
　これから悪徳富豪の屋敷に乗り込む予定だ。
　予告状は出した。

『悪い大富豪さんへ＋頑張る警察の皆さんへ
　☆月★日、「至高の七玉秘宝」をいただきにいくよ　怪盗ミケ・エミーナ』

　その予告状を受けて、大富豪の屋敷には警察やらガードマンやらが守りを固めているようだ。
　リビングのテレビでは、ミケ・エミーナの予告状について報道が始まっている。
　腰にネットガン。ワイヤー、針金などの潜入道具を用意する。
「それじゃ、そろそろ」
　
　三階で窓ガラスが割れる音がした。刑事達はすぐに反応する。
「三階だ！　窓が割れた！　お前達は正門と玄関、裏口は押さえておけ！」
　警官達がそれぞれの持ち場へ散って行く。
　その様子に、変装していたミケは一人小さく頷いた。下調べ通り、地下室への階段を降りて行く。
「こんなところに閉じ込めるなんて」
　ドアの鍵を針金で開けて、中へ。
「！」
　そこには七匹の子猫達が怯えた様子で固まっていた。
(可愛い……！　小さくてふわふわで愛らしい！！)
　ゆっくりと一匹づつ愛でたいところだが、一階が騒がしくなってきた。
「ちょっと狭いけど、我慢してね」
　七匹すべてを猫キャリーバックに入れる。そこまでやって、懐中電灯の光がミケ・エミーナの背中を照らし出した。
「！」
「見つけたぞ、お前がミケ・エミーナだな？」
　ミケは振り返り様にポケットから取り出した煙玉を床に叩きつけた。
　ボフンッという音がしてピンク色の煙が地下室内に充満する。
「なんなんだ、これは。ハックョン！」
　ミケは簡易ガスマスクを装着し、くしゃみをしまくっている警官達の横をすり抜けた。上の階へと走る。
　しかし、階段を上ろうとすると、上から数人の警官が駆け降りてきた。
　ミケは素早く腰のネットガンを取り出した。
「観念しろ！」
　構わず発射、
「うわっ！？」
「なんだ、これ」
　大きく広がったネットが彼らの体を絡めとる。ミケはワイヤーを天井に投げて小さなシャンデリアに絡ませると、床を蹴った。ワイヤーを巻き上げる機械を使って上昇すると、そこからジャンプして二階廊下へ。窓を開けて枠に足を駆けたところで、
「止まれ」
　その声に顔だけで振り返ると、拳銃を構えた警官が数人立っていた。
「もう遅いよ」
　ミケは窓枠から飛び降りた。銃声がするが、気にしない。受け身を取りつつ、地面へと降り立つ。
「いたぞー」
　ミケは屋敷の塀を飛び越えた。

　ミケがやって来たのはとある民家だった。鍵を外して猫キャリーを置き、再び施錠をしてそこを去るり、向かいの民家の屋根へ移動した。
「これで、きっと」
　富豪が雇った泥棒に盗み出され、捕えられていた子猫達が全員揃って元の家に戻り、飼主一家と親猫達と再会できることだろう。
「逃がすなっ」
　再び見つかってしまった。物音に気づいた夫婦と娘が玄関まで出てきて、子猫達に気づくだろう。やがて奥から親猫達も現れてその場は感動に包まれるに違いない。
　と、夫婦が外の様子を見るために玄関の戸を開けた。
　娘は嬉しそうに子猫達を抱っこしたり、撫でたり。子猫達は親猫達に甘えている。やがて、夫婦は外に何もいないことを確認すると玄関の戸はしめた。
ミケはそこまで見届けてから走り始めた。追っ手は来ているようだ。
「よかったね」
　ミケはうるうると来た涙を拭い去り、夜の街へと消えて行く。

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