ひまわり迷路へいらっしゃい｜リアクション

ひまわり迷路へいらっしゃい

●将来の形

　ヒュー・ヒューバートは木天蓼市内の自宅アパートで城山水樹と過ごしていた。ゆったりと流れる時間のなかで彼女はねこったーを開き、タイムラインを追う。すると、ひまわりがたくさん咲いている写真がアップされていた。どうやら九夜山の裾野にオープンした『ひまわり迷路』という場所らしい。

「ねぇヒュー、ここに行ってみない？」

　水樹はヒューに自分のスマホを見せながら提案した。彼はその提案に賛成し、２人でその場所へデートに向かうことにした。
　入道雲が沸き立つように浮かぶ空の下。夏特有の暑さを肌で感じながら、２人は九夜山のほうへ向かって歩く。日焼け対策や水分なども気をつけながらしばらく進むと目的の場所に到着した。そこにあったのは、途方もない広さにずらりと咲くひまわりだった。

（見渡す限りたくさんのひまわりで迷路を作るなんて結構大変よね）

　そんなことを思いながらヒューの手を取ると、指を絡めて自然と寄り添うように肩を並べて迷路のなかを歩く。

（カメラを持ってくるべきだったかな）

　ヒューは風景写真を得意とするフォトグラファーとして少し後悔した。目の前で展開される青と白と黄色のコントラストに、構図やら何やらを考えてしまう。

（何考えてるの？）

　ふと、水樹が問うようにヒューを見つめる。その視線に気づいて顔を景色から水樹のほうへ向ける。すると身長が同じで、目線も同じだから自然とお互いの瞳を見てしまう。なんだか互いに気恥ずかしくなって赤面してしまった。
　まるで中学生みたいだが、２人にとってもはや欠かすことのできない愛情表現ともいえる。少し照れ笑いを浮かべながら、しばらく適当なことを話しつつ歩く。

（迷路というからちょっと手の込んだものかと思ったけど、そうでもないみたい。子供でも気軽に楽しめるかな。むしろ皆にひまわりの花を見てほしい、っていう気持ちが素直に出ている感じ）

　太陽の光を浴びて元気に咲くひまわりを見ながら、水樹はそう思った。歩いていて、ふと涼しげな空気を感じてそちらへ２人で向かう。そこには綺麗な泉があり、そばには青カエルの祠があった。

（これは……？）

　不思議そうに眺めていると、可愛らしい小人たちが現れた。『ひまわりの精』とでも呼ぶべきだろうか。小人たちは楽しそうに水樹たちに話しかけてきて、健康や長寿にご利益があることなどを教えてくれた。

（健康と長寿か……その中には美しさもあるのかな）

　そう思いつつ拝んだ後に冷たい湧き水を飲んでみると、とてもおいしい。ヒューもおいしいと率直な感想を口にした。ここの雰囲気を満喫してから、またしばらく歩くと今度は別の祠を見つけた。これは桃色ウサギの祠といって友情や恋愛など人間関係にご利益があるという。また相手と一緒に拝めば効果倍増だとか。

「一緒に拝みましょ」

　それを聞いた水樹は迷わずヒューに提案し、彼も同意して２人で手を合わせた。互いのことを想い、これからも２人で共にあることを願う。その後はひまわりの精たちと遊んだり、迷路を一緒に巡ったのでデートではなくなったが楽しい時間が流れていく。

（将来、彼と結ばれて、子供が出来たらこんな風に親子で遊んだりするのかな）

　水樹はいつか訪れるかもしれない未来を思い描いて、くすっと笑った。

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