なつやすみのだいぼうけん！｜リアクション

なつやすみのだいぼうけん！

　しかしただ山道を歩いていても、お宝が見つかるわけもなく。
「お宝ってどんなところにあるんだろう？　ミリアは知ってる？」
　あんずの問いに、美里愛は考える。
「お宝がありそうなところ……うーんと……ミリアだったら、すぐには見つからないところに隠すとおもうな！　山奥とか！」
「山奥？　じゃあうち山奥行きたい！！　うーん、でも迷子にならないように気を付けないと怒られちゃうな……」
　張り切ったあんずのテンションが、ちょっと下がった。
　元気なあんずはすぐに駆け出して、迷子になることも多いのだ。
　今日も本当は虫を追いかけて林の中に入って行ったりしたいのを我慢して、迷子にならないようちゃんと道を歩いている。
　すると、ゆきのがかばんから何かを取り出した。
「迷わないように……これ……持ってきた」
　プラスチックの宝箱を開けると、ビー玉やきらきらした宝石のおもちゃが詰まっている。
「これを……道に落としておく……ヘンゼルと、グレーテルみたい」
「えーっゆきの天才！　これで迷子にならないな！！」
　あんずの赤紫の目がきらきらと輝く。
「わ、すごーい！　キラキラだー！　これもお宝みたーい！」
　美里愛もにっこりする。
「あんずが食べちゃうかもしれないから、パンはやめたけど」
「食べないよー！」
　ゆきのとあんずのやりとりを微笑ましく見ながら美里愛は思う。
（お宝そのものより、みんなでそれを見つけることに意味があるんじゃないかなあ）
　
　宝石を落とし始めて、しばらく歩いたけれど。
「だいぶ探してるけど……お宝……無いんじゃない？」
　ぽつりとゆきのがつぶやく。そこまでお宝が欲しいわけではなかったから、期待してはいなかったけれど。
「うーん……みつかんないねー……やっぱりすぐにはみつかんないとこにあるのかなー？」
　ポジティブな美里愛も、ちょっと疲れてきたのかもしれない。
「うーん……お宝ないなあ……」
　あんずも同意せざるを得ず、やけ気味に声を上げるが。
「お宝ないのかー！？　ってゆきの危ない！」
　たまたま小鳥を目で追っていたゆきのが、地面を這う木の根につまずいて転んでしまった。
「……いたっ！　……いたい……けがした」
「わー！　前見ないから転んじゃうんだぞ！　大丈夫かー！？」
　駆け寄るあんず。
「わ、ユキちゃんだいじょーぶ？　こんな時は……よーし！」
　すりむいて血が出ているゆきのの膝を見て、美里愛はウエットティッシュと絆創膏を取り出した。
　傷を拭いてから絆創膏を貼り、
「Pain, pain, go away!」
　唱えたのは、自分のろっこん名。
「これでもう痛くないよー！」
　美里愛のろっこんは傷を治す力はないけれど、絆創膏を貼っている間、その部位の痛みがなくなってしまうのだ。
「……ミリア、ありがとう」
　泣きそうな顔になっていたゆきのの表情が柔らかくなる。
「さすがミリア！すごい！！　ミリアが治してくれたら痛みなんてへっちゃらだな！！」
　普段から走り回ってケガが多いあんずは、美里愛のろっこんのすごさを知っている。
「じゃあ、またお宝さがしするぞー！！」
「改めて、お宝探しにれっつごー！　だよー！」
　あんずと美里愛の元気な声が上がった。
　

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