【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

☆薔薇の花火～百合？

（花火もいいけど、薄い本のネタはないかな～）
　タルトは花火を見る合間にカップルを観察してうろついていた。
「あれ？」
「響さん？　こんばんは」　
　１年のときの担任、樋口弥生先生とばったり出会った。

「こんばんは～♪やっぱり先生は浴衣が似合うね」
　元気に返事をするタルト。
「ありがとう。響さんも似合ってるわよ」
「ふふふ、そうかなあ？」
　ドーン。
　打ちあがった花火を見上げると、タルトの視界に薔薇の花火が広がった気がした。
「あっ、薔薇の花火が……」
　しかし、次の瞬間跡形もなく消えてしまった。
「あれ、気のせいだったのかな？」
「響さん、一人なの？　気をつけてね」
（あれ、なんだかドキドキする……）
　タルトは弥生先生から目を離せなくなっていた。
「ああ、僕なら大丈夫。僕より先生のほうが危ないかも。ますます綺麗になったよね……」
「大人をからかうもんじゃないわ。相変わらずなのね。私は教え子たちと一緒だから大丈夫よ」
　面白そうに弥生先生が言う。
「それなら良かった。僕は相変わらずだよ♪　こないだの林間学校でもネコミケの追い込みで原稿書いてたんだ……って、これ内緒ねｗ」
　ドキドキはしているが、それは表に出さず、いつも通り振る舞うタルト。
（ドキドキしてる自分を、別の自分が見てる感じなんだよね）
　だから先生も周囲の人たちも気づいていないようだ。
　こんなにも惹きつけられているタルトの思いに。
「先生、あのね……ネコミケに興味ありますか？」
「ネコミケ？　そうね、行ったことはないけど興味はあるわよ」
「よかったら今度一緒に行きましょう」
　ずっと一緒にいたいけど、連れの人がいるなら邪魔せずに見守るよ。
（薔薇の花火を見たはずだけど、これって薔薇じゃなく百合だよね……ｗ）
「先生、また歌を聴くの楽しみにしてるね～♪」
　浴衣のお姉さんたちに話しかけられた先生に手を振って、その場を離れる。

　気がついたらドキドキは治まっていた。
　安心したような、残念なような。
「せっかくの体験、生かさない手はないね」
　タルトは遅くならないうちに帰ることにした。
（さあ、今のドキドキを忘れないうちに新しい薄い本のネタにしなきゃ！）