【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

☆あじさいの花火～先生と

　ドーン。
「よく見えるな」
　義弘先生が言う。
「そうですね」
（まるで特等席で見てるみたい。教えてもらって良かった）
　智瑜は花火の良く見える場所に満足していた。
「あっ、あじさいの花火ですね。綺麗ですね」

　智瑜はそう言ったが、義弘先生は首を傾げた。
「あじさい？　そういう花火なのか？」
　どういう意味だろう？　と思った時、異変は起こった。
（あれ？　なんだか悲しくないのに涙が出てきました）
　ぽろぽろと零れる涙を止められず、智瑜は動揺した。
「どうした、宮祀？」
　智瑜はそのまま先生の胸に飛び込んだ。
「義弘先生……」
「宮祀？」
　先生は戸惑いながら抱き止めてくれた。
（先生と一緒で楽しいのになんで涙が出るのかな？　もしかしてこれは嬉し涙？）

　義弘先生はグレーにブルーの線が入ったハンカチを取り出し、智瑜のなかなか止まらない涙を拭ってくれた。
「一体どうしたんだ？」
　キュン。
　智瑜の胸が先生の優しさにときめく。
（もっと好きになっちゃいそう）
　そのまま智瑜は、先生の胸に顔を押しあてた。

　ドーン。
　花火は見えず、音だけが聞こえる。
　先生の胸は広くて、温かくて。
（今はこのままで居たいです）
　涙が止まるまで先生の胸で泣きたいと思った。

　どれくらい経っただろうか。
　ようやく泣き止んだ智瑜は先生の胸から顔を離した。
「大丈夫か？」
「……お腹空きました」
「……何か買いに行くか」
　まだ花火は続く中、智瑜と義弘先生はたこ焼きと焼きそばを買った。
「機嫌が直ってよかった」
　そう言う義弘先生に。
「先生、泣いたことは二人だけの秘密です。」
　小さな声で智瑜は言うのだった。

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