【花火大会】夏の夜花に何を見る｜リアクション

【花火大会】夏の夜花に何を見る

〇屋台を巡る人々

　木天蓼の白い花の浴衣に身を包んだ恵御納夏朝は、花火大会にやってきた。
　屋台通りを巡りつつ時計を見ながら考える。
（軽く食べてから海岸行こうかな。１９時半までは屋台通りを巡って、後でまた食べるかもだし、花火を見るまでは軽く……できるかな……）
　たくさんの屋台を見ると、結構な誘惑になりそうだ。
「アメリカンドッグを１個ください」
　さっそく、比較的軽めな気がするアメリカンドッグを買って食べる。
「後は……今川焼きを１個」
「へい、中身は何にしますか」
　屋台のおじさんに聞かれて少し考える。
「あんことカスタードがあるんだね。今日は普通のあんこにしてみよう」
「毎度あり」
（粒あんもこしあんもカスタードクリームも好きだけど、今回は粒あんとこしあん、どっちかな……？）

　アメリカンンドッグを食べていると、道端に猫の姿を見つけた。
「猫さん、こんにちは」

　声をかけてなでなでする。
「ニャー」
　人懐こい三毛猫は逃げるでもなく夏朝に身を摺り寄せた。
　ほっこりしつつ、夏朝はちょっと心配になる。
「この後大きい音がするから、びっくりしたらごめんね」
「あっ、夏朝ちゃんだ！」
　不意に呼ばれてそちらを見れば、猫好き仲間である響タルトがこちらへ近づいてきた。
「響さん、こんばんは。あ、猫さん！　……可愛い浴衣だね」
　タルトの紺の浴衣に描かれた猫の姿を、夏朝は見逃さなかった。
「ありがとう♪夏朝ちゃんの帯にも猫がいるよね。花火大会の時にも猫と遊んでるとは、ぶれないねー」
　夏朝が撫でている猫を見てのタルトの言葉に、夏朝は言う。
「猫さんも楽しめる花火がでかないかなって思ってたんだけど……花火の仕様上難しいかな」
「確かに、猫には花火の音はうるさいよね」
　頷いたタルトの赤い髪飾りが揺れ、リン、と猫の首輪のように鈴が鳴る。
「猫さんも楽しめるお祭りとかもできたらいいな」
　夏朝は本当にそう願っている。
「さて、僕も何か買ってくるよ。またね～」
　タルトは猫のような軽い身のこなしで、屋台通りに消えていった。後を追うように猫も去って行く。
「うん、またね。僕もそろそろ行こうかな。猫さんもまたね」
　
　猫さんに別れを告げた夏朝は時計を見て考える。
（１９時半……花火はしっかり見たいから、そろそろ寝子ヶ浜海岸へ移動しなきゃ）
　人混みはあまり得意ではないから、よく見える、隅っこのほうに行こうと考える。
　しばらく隅っこを探すと、人の少ない場所がうまく見つかった。
　夏朝は袋を開け、今川焼きを食べ始める。
（美味しい）
　今川焼きの中身はつぶあんだった。

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