推理ゲーム『ねこじま人狼』5th｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』5th

●　裁判

　３人の占い師たちは一歩も譲らず、１日目の裁判では占いの結果を覆した志波武道が疑われ、処刑された。
　しかしその夜犠牲になったのはサキリ・デイジーカッター。呪殺の様子はない。
　翌朝、焼きたてパンの香りを嗅ぐことができなかった島民たちは、
「貴重なパン屋が狼の餌食に！」
「あいつの焼くメロンパンが楽しみだったのに……」
　などと、嘆きに暮れた。

　しかしこれで、怪しい者はふたりに限られた。
　卯木衛と来島アカリである。
　尻尾を現さない二人の占い師は、島民から見たらどちらも怪しく、どちらも真の占い師のようであった。
　真贋を計りかねた島の人々は、島全体を守るため、二人同時吊りの方針を取った。

「それでは、彼の者こそ人狼、と思う人物をそれぞれ指差してください」
　ゲームマスターのエムアの指示で、生き残っている７名のプレイヤーは一斉にこれぞと思う人物を指差す。

　卯木衛は、来島アカリを。
　小山内海は、来島アカリを。
　来島アカリは、卯木衛を。
　鴻上彰尋は、楢木春彦を。
　楢木春彦は、来島アカリを。
　水守流は、卯木衛を。
　八重崎壱都は、卯木衛を。

　衛とアカリを同票で吊るために、彰尋は適当な島民に投票している。
「また俺？」
　ジト目になる春彦に、彰尋は茶目っ気たっぷりに舌を出した。
「他の島民の誰でも良いと思うんだけど、つい乗っかりたくなって……」

　エムアは一同を見渡すと宣言した。
「来島アカリさん３票。卯木衛さん３票。楢木春彦さん１票。……結果、処刑されるのは来島アカリさんと卯木衛さんです」

　話し合いの通り。裏切りは、ない。

　エムアは両手を二丁拳銃のように形作り、アカリと衛を同時に指さした。
「それでは、アカリさん、衛さん……――さようなら」
　パーン、と言って引き金が引かれる。

「むー……」

「……ふん」

　――ゲームが、終局する。

　エムアはにんまり口の端をあげ、告げる。

「狼、狐ともに死亡したため、今回のゲーム、島民チームの勝利です！」

◇　◇　◇

「よっしゃー！」
　春彦が手を上げて喜び、生き残ったメンバーは互いにハイタッチ。
　一気に場の空気が緩む。
　三人の怪しき占い師は全滅した。
　結果も予想通り。
　問題は、武道・アカリ・衛の三人のうち、誰が真で、誰が狼で、誰が狐だったかだ。

　壱都が推理を口にする。
「……一応内訳予想としては卯木狼、志波狐の来島真……でしょうか」

　一方、彰尋はこう予想したという。
「最初はアカリ君が真で卯木君が狼かなと思ったけど、途中から狼がアカリ君、真が卯木君、狐が武道先輩、じゃないかな、って」

　海も誰が真の占い師なのかは、かなり迷った。
『志波君は最初は真かなぁと思ってたんだけど、最初の結果が嘘だったあたりからちょっと微妙な感じだったかな。まぁ、占い師全員吊るせれば何とかなりそうだったから何とかなりはするかなと思ったけど』
　らっかみ人狼初参加であったが、どんと落ち着いたところも見せた海は、空色のマカロンを口に入れて、真実はどうだったんだろう、と空色の瞳を左右に動かす。

「志波先輩が真だったら申し訳ないよ」
　悠々とティータイムを楽しんでいたサキリが言うと、流もうんうん頷いて、
「志波が真占いだったらびっくりだな」
　と未だ黙ったままの武道を興味深く見つめた。

　にまにまと楽しそうに推理を聞いていたエムアが口を開いた。
「ふふ。では、正体の公表と行きましょう――」

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