お昼休みの友達放送｜リアクション

お昼休みの友達放送

♪♪　野々ののこの時間

「本当に野々さんがゲストで出演してる！」
　佐藤英二は、教室の自分の席で『寝子高友達の輪！』の放送を待っていた。
　内向的で地味、平凡を絵にかいたような英二。
　大声でアピールしたりはしないので誰も気には留めていなかったが。
　次回ゲスト指名制なのでののこの登場を知っていて、絶対に聞かないと！　とスタンバイしていたのだ。
　嬉しそうに聴いている英二だが、すぐに雑音にのけぞる。
『ばっひゅ（ガガガガピピー！）』
「わっ、いきなりハウリング！？」
　ようやくハウリングも治まって、再びわくわくしながら放送に耳を傾ける。
「猫まみれになったエピソード、元気な野々さんらしくて微笑ましいな」
　放送を聴きながら、英二は気になっていた。
（質問、読まれるかな？）
　ののこが出演するのは知っていたので、リスナーとして質問を投稿しているのだ。
　司会のアントニオン・モライシュの声が流れる。
『リスナーからの質問だ。「もうすぐ夏休みですが、皆さんは遊びに行きたい所とかありますか？」』
（読まれた！　質問が読まれるのってドキドキするけど嬉しいなあ）
　ざわめく昼休みの教室内でののこの答えを聞き逃すまいと、英二は放送に集中する。
　だが集中するまでもなく、元気なののこの声が耳に飛び込んでくるのだった。
『うーんとねえ、海！　それから花火大会！　夏祭りも！』
　英二はその答えにほっこりしながら、海や夏祭りで楽しそうなののこの姿を思い浮かべる。
　願わくばその隣でののこの姿を見ていられたら。
『ＨＡＨＡＨＡ！　いいねえ、一つに絞れないよな！　さて、何か言っておきたいことはあるかい？』
『そうだ、ゲストプレゼントってもらえるの？』
　わくわくしたに顔が見えるような声だが、英二は驚いた。
『エッ？　ゲストプレゼントってゲストからプレゼントするもんじゃないのかい？』
　司会者も驚いているようだ。
『えー、そうなの？　プレゼント用意してないや』　
『ゲストプレゼントがほしい？　ソーダナ、カワイコちゃんには、オイラのドレッド一本をあげようかナー！　ご利益あるんだゼー？？？』
　しょんぼりした様子のののこに、アントニオンが機転を利かせる。
『ご利益あるの？　欲しい！』
　ののこの発言に、自分がらっかみだろ！　と心の中で突っ込んだもれいび多数。
『欲しい人は来週の月曜締切りで放送部あてに応募してくれ。厳正な抽選で一名にプレゼントだ！』
『応募するー！』
（もらって嬉しいのかな……でも、当たるといいね）
　自分のことのように気になってしまう英二。

　そんなことを思ううちに、ドキドキの放送はあっと言う間に終わった。
「うん、良い感じの放送だったよ。今度、野々さんに会った時に感想を伝えてあげよう」
　自分が指名されることは端から頭にない英二。
　ののことは今はクラスが違うのが残念だけど、気さくな今の距離感も気に入っているのだった。
　

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