お昼休みの友達放送｜リアクション

お昼休みの友達放送

♪♪　旅鴉月詠の時間

（入部して一ヶ月、多少は慣れてきたけど……むー、ゲストが来るってなると緊張するな……？）
　放送部員の来島アカリは、早めに放送室にやってきた。
「さて、今日は『寝子高友達の輪！』の当番の日か、頑張ろうかな！」
　鴻上彰尋が顔を出す。
「アカリ君もいるならどちらか裏方で、どちらか司会とかやってみる？」
　当番が決まっているとはいえ用事で来れないこともある。一人で二役こなさなくてはならないこともあるのだ。　
「むー、そうだな……ま、なんやかんやで結構慣れてきたし？　どっちでもバッチリこなしてやるぜ？　安心して任せとけよ、鴻上♪」
　ずいぶん心強い返事が返ってきたな、と彰尋は微笑んだ。
「じゃあ頼むよ」
　元々は人見知りなアカリだが専攻が演技系なので、放送部としての活動でならそれなりに堂々と出来るかな？　と思う。
「ええと本日のゲストさんは……？」
　二人の背後から、ぬっ、と現れた赤目白髪の人物。
「私だ」

「こんにちはー、ちゃんとご飯食べてますかー？　昼休みのお楽しみ！　特別番組『寝子高友達の輪！』の時間でーす♪」
　アカリがノリ良く司会を務める。
「今日はこの方にお越し頂きました！　自己紹介お願いします、どうぞー♪」
「ハイ私だ」
「えーと、お名前からお願いします」
「名を名乗れ？　寝子島高校芸術科２年７組星ヶ丘寮所属美術部所属『混沌の魔女』旅鴉月詠だ」
　名乗った月詠が、思い切りマイクを近づける。
「ばっひゅ（ガガガガピピー！）」
「ちょ、ちょっと、マイク近すぎます」
「マイク近すぎはお約束ではないのかね？」
（そう来たか……）
　平然と答える月詠に内心頭を抱えるアカリだが、『司会』としての演技を忘れず敬語は崩さない。
　その間に彰尋が音響を調整し、無事雑音は消えた。

「ハイ私だ。誰やらから私への御指名承り参上ということだ。受けないと思った者多いのではないだろうか？　私は結構悪戯が好きでなぁ、丁度宣伝に使えるしな」
「宣伝ですか……旅鴉さんは絵が好きなんですよね」
「さよう、そんなわけで広報活動だ。美術部は部員だけでなくギャラリーを歓迎する。学校生活の貴重な時間を有効的に使用してせっかく創り上げた作品、見てもらう人がいなければ勿体無いというものでな」
「部員じゃなくても見に行っていいんですね」
「ストイックに作品創り続けるだけでも勿論良いのだけどな。完成した作品は美術室前に飾っておくので暇な人、休憩に来るといいのではないかな」
「わかる気がします。演劇も人に見てもらえるのが励みになるし」
「製作過程を見学に来るもよし。もっともフィールドワークや自宅製作の者もいるからメンバーはまちまちだがな。同人活動も芸術だし漫画描きにくるのもいいのではないかな」

　そんな調子で月詠の話題は尽きることなく、あっという間に時間が過ぎた。彰尋はカンペで『あと３０秒』と知らせる。
「なるほど。ありがとうございました。それでは……」
「ちなみに我がアトリエへの来訪も歓迎する。星ヶ丘寮内海望む丘の部屋に案内されるがよい」
「あっ、それでは次の人の紹介をお願いします」

（あー緊張した……）
　無事に終わり、人見知りなアカリはホッとしていた。
（けどまー、無事に終わったし結果オーライだよな、うんうん）
　気を取り直し彰尋にドヤ顔を向ける。
「見てたかー鴻上、俺の華麗な活躍っぷり♪」
「お疲れ様、緊張はしてるけど喋りも慣れてきてるなって思ったよ」
　彰尋は笑顔でアカリを労った。　

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