お昼休みの友達放送｜リアクション

お昼休みの友達放送

♪♪　青山絢の時間

「放送部員の来島です。青山さんが『寝子高友達の輪！』に紹介されたので、出演お願いします！」　
「えっ？」
　昼休みの教室で、絢は狐につままれたような気分だった。
「私ですか？　いったい誰の紹介で？」
　指名を受けていたなんて全然知らなかった。
「話は途中でするんで、急いで！」
「えっ、今日これからなの？！」　
『フールルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルｒ・・・（ゲホッゲホッ）　ヤッヒー！！！！』
　スピーカーからアントニオンの歌がアカペラで流れている。途中咳き込んだのは生放送ゆえのご愛嬌。
　もうすでに放送は始まっているのだ。　
「１年生の○○さんからの紹介です。話したことはないけど気になってたって」
　走りながらアカリが説明してくれたが、名前を聞いても心当たりはなかった。
『オイラは司会のアントニオン・モライシュ、人よんでアントン様が、お送りする午後の楽しいひと時。暑い夏を、もっとムシ暑くしていくので熱中症に注意ナ！
　まずハジメに今日最初にかけるご機嫌なナンバーは、ＤＯＧ１１０の新曲【ノーウェイ　ワン】ダッ！！！　ドンと、見据えて！』
　最後のはDon't miss itと言うつもりだったらしい。

　絢は放送室までダッシュし、どうにか曲が終わる前に滑り込む。
　そのままマイクの前に座らされる。
「今日のゲストはナ～？　青山絢ちゃん！　オーゥ！　絢ちゃん、緊張しってっか？？　自己紹介よろしく！」
「は、はい……こんにちわ。……私は２年７組の青山絢です。演劇部に所属しています」
　息を整えながらマイクに向かう絢。
「演劇部かー。どんなことやってるの？」
「ええと、基礎的な練習もしますが、部室では即興でお芝居をしたりもします……」　
「アドリブに強いんだネ！」
　そんなことを話した後。
「絢ちゃんは寝子島出身じゃないんだネ？　寝子高へ進学したのはどうして？　演劇部に入りたかったからとか？」
「えっ……」
　一瞬言葉に詰まってしまった。
　本当のこと……父が再婚して弟ができた事情を話すわけにはいかない。なので、
「従姉が勧めてくれたから」
　とだけ答えたのだった。
　幸い家族のことを聞かれることはなく、その後は別な話題で盛り上った。
「ところで、絢ちゃんはトリエンナーレでバニーな司会者やってたよネ？」
　突然質問されて、呆然とする絢。
「えー、あー……」
「とても似合ってたヨ！」
「……」
　極めてフツウに制服を着て司会を務めるはずだったのに、突然理事長に際どい衣装を押し付けられて……
　思い出して恥ずかしくなり、あの時のように絢は真っ赤になった。
　アントニオンの言葉に、何をどう答えたか記憶にない。

（なんだかもう疲れた……）
　どうにか終わって解放された絢。
　だが、放送はかなり好評だったという。

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