守ろう、スイーツランド！｜リアクション

守ろう、スイーツランド！

　周囲３６０度、見渡す限り広がるのはスイーツの桃源郷。楡宮遠海はその理想郷に目を瞬かせる。目前に広がるビスケットの森、チョコの川のせせらぎと甘い香り……アップルパイの平原にイチゴタルトの山、小高い丘もある、と思いきやそれはシュークリームで、クッキーの石畳やら、マカロンの生る木やら……。足もとに咲いていたキャンディの花を見つけ、そっと手折る。
　花弁は薄く作られた飴菓子、茎はスティックキャンディ。
「お、美味しい……！」
　クッキーで出来た建物も、遠慮なくいただく。ケーキのオブジェも、めちゃくちゃに美味しい。
（空に浮かぶ雲は……もしかして綿あめ？）
　見上げた先の雲まで美味しそうだ。遠海は、はふぅと小さくため息をつく。
「しかもいくら食べても全然お腹がふくれない……これって食い尽くせってことでしょ？」
　何を隠そう、遠海は痩せの大食いだ。現実世界でだってその気になればいくらでも食べられる。けれど、このスイーツランドで唯一違うところ、それは『いくら食べても太らない』と言うところなのだ。
「体重のこととか気にせずに食べられるってのは最高だよね」
　ゴキゲンでクッキーをもう一口。
（……そのわりには、いくら食べても胸が全く大きくならないのはどういうことなの）
　やせ形なのは良いのだが、育って欲しいところが育たない。遠海は涙をこらえるように下唇をくっと噛むのだった。

「はわー……こんな世界幸せすぎるにー！」
　ほっぺたが落ちそう。牛乳プリンの池から救ったプリンを頬張り、七音侑は目尻を下げる。
「しかもお腹いっぱいにならないから不思議……」
　そして、はたと気づいた。
「あ、でもカロリーは……」
　どうなんだろう、このまま食べ続けても……ううん、満腹感がないということは、カロリーゼロ。それに、牛乳プリンは白いからカロリーゼロ（暴論）
「大丈夫かな、多分！」
　軽く胃のあたりを撫でてみる。現実でのお腹いっぱいのときのぽっこり感は、一切ない。
「甘くなってきたから何か口直しはないかな～」
　スイーツ、だけど塩キャラメルとか……。さすがに口があまーくなってきたぞ。

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