月蛍苑へいらっしゃい｜リアクション

月蛍苑へいらっしゃい

●応援する気持ち

　綾辻綾花は気づくと綺麗な庭に迷い込んでいた。周りを見渡しても心当たりはなく、どうやら知らない場所のようだ。すると、ここの主らしき女性がやってきて、ここが『月蛍苑』という星ヶ丘にある庭園であることなどを教えてくれた。
　女性に挨拶を済ませると、少し庭を歩くことに。すると寝子島高校の教師・久保田美和を見つけた。ベンチに座って何か飲んでいるようだが、授業の様子とはどこか違う。

「あー、やけ酒っぽいですね」

　美和先生だと恋愛絡みだろうか、と綾花は予想した。綾花は提供されていたお茶を受け取ると、先生のほうへ歩き出す。

「美和ちゃん先生、こんばんは」

　そう声をかけながら、隣に座る。先生からお酒を受け取ると、それを先生のコップに注ぐ。

「どうしたんですか？　話を聞きますよ」

　美和先生はぽつぽつと語りだした。失恋話を聞くのはいつものこと。綾花は年下の自分がいうのも失礼なので言わないが、先生が可愛くて明るくて、性格も良いからもてないはずがないと思っている。

「出会った人が美和ちゃん先生の運命の人じゃなかったってだけなので、今度こそ素敵な人に巡りあえますよ」

　一通り話し終えると、先生も落ち着いてきたようだ。すると周囲の蛍たちが猫の形を描く。鮮やかな光で描かれた猫の可愛さに癒される２人。

「先生の好きなタイプはどんな人ですか？」

　先生は綾花の問いに頭をひねる。もしかしたら蛍がそれを形にしてくれるかもしれない。そう思って尋ねた一言。そして浮かんできたのは色彩豊かなハート型。

（好きなタイプというより、両思いということでしょうか？）

　先生はそれを見ながらどことなく恥ずかしそうだった。それから綾花はお茶を、先生はお酒を呑みながら、浮かぶ月と池に映る月を見つつ他愛のない話を続ける。

（気持ちを切り替えて次の恋を頑張ってほしいです。応援してます！）

　雑談が恋愛方面に傾くと、先生は目を輝かせた。綾花は先生のコップにまたお酒を注ぐ。

「とことん付き合いますよ」

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