はるか上空から落下中！｜リアクション

はるか上空から落下中！

●楽しさに変えてしまおう

　季節は夏。
　八神修は汗を拭いながら外を歩いていた。しかし次の瞬間、気づいたら虚空にいた。暑さが一瞬で遠ざかり、新鮮で冴えた大気が修を包む。

（また神魂の影響かな）

　突然な事態にも関わらず、修は冷静だった。以前に予兆なく別空間に飛ばされた経験があったからかもしれない。

「あのときはあおいと一緒だったが……って、あおい！」

　辺りを見ると七夜あおいも修と同じように落ちていた。修とは対照的にだいぶ慌てふためいている。彼女に近づいて、できるだけ普段と変わらない風に声をかける。

「君も飛んでいたのか」
「うん。散歩してたんだけど、気づいたら……」
「はは、俺もだ。奇遇だな」

　話をしている間も落下を続けているが、あおいは修のおかげで落ち着きを取り戻す。そうすると少しだけ周りを見る余裕も出てくる。自分たちの落ちる先にあるのは、青白く輝く球体。写真では見慣れたそれに２人とも目も心も奪われる。

「地球は青かった。それしか言葉が無いな」

　修はこの光景を２人で見れた幸運に感謝した。しかし今その球体めがけて落下している事実は変わらない。そのまま落ち続けて、周囲はやがて青い空に変わる。

「そういえばこの前は寝子島が砂漠になってたね……」

　この状況も神魂の影響だというのはあおいも察しているのだろう。その繋がりで以前の出来事を思い出してしまったらしい。修はその様子をみて、空中で回転したり、軽く踊る仕草をする。

「これはお詫びの遊覧飛行プレゼントだったりして」

　あおいを安心させようと、努めて明るく話しかける。まだ楽観するには早いが、それでも楽しそうな表情を浮かべた。

「修君がいれば安心だね」
「そ、そうか」

　直球で返されると修もさすがに照れた顔を見せる。それを隠すように下を向くと、そこに広がる光景と記憶にある航空写真を照らしながら、おおよその高度を導く。そのときふと浮かんだことをそのまま口にした。

「スカイダイビングみたいだね」

　ゆっくりと落ちている感覚も相まって、まるで遊覧飛行のようだった。あおいもその言葉を聞くと、はにかみながら風に乗るように体を広げた。とはいえ、地上が近づいてくると緊張感が高まる。パラシュートも無いし、服を広げて減速しても限度がある。
　２人は思わず目を閉じた。
　バキバキッと激しい音とともに２人の体は地面に落下した。あおいは修に抱えられるように体を丸めて気を失っている。修は背中から落ちたものの大したことはなさそうだ。おそらく木が衝撃を吸収したのだろう。

「それにしても……地上は暑っついな」

　そう口にしながら、あおいの穏やかな顔を見て修は安堵した。

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