はるか上空から落下中！｜リアクション

はるか上空から落下中！

●過去最高地点からの飛び込み

　水上桜は空気の肌触りを覚えながら自由落下を続けている。目の前に広がるのは、青と緑と灰色と数多の色々たち。最初、それが何なのか理解できなかった。しかし、やがてそれは形を取り始めて見慣れた姿に変わる。

「寝子島の形……ちょ、ちょっと！　これってもしかして！」

　この景色が見えるのは島よりはるか上空のはず。つまり、いま桜はそこから落ちている最中なのだ。

「またか、またしてもフツウかぁぁあぁぁぁぁっ！！！！！」

　全身から魂の叫びをあげてしまうが、それは風圧にちぎれ飛んだ。凄まじいスピードで落ちているらしいが、奇妙なことにゆっくりと落下しているように感じられる。とはいえこのままでは島に落下するのは時間の問題。

「……ていうか、どうすりゃいいんだろう？」

　少し考えて浮かんだことは、とりあえず海に落ちることだった。

（海ならば少なくとも地面に叩きつけられるよりはまだマシな気がする……はず。きっと。たぶん。そうだといいなあ）

　水泳部とはいえこの高さからの飛び込みはさすがに経験がない。確信はもてないが、今はそれを信じて行動するしかない。

（そうと決まれば空中をとりあえず泳いで……って、どうやったら泳げるのか？）

　水の中ならいくらでも泳げるが、空中で泳いだことはない。だがそんなことを言っている場合ではなかった。平泳ぎ、クロール、バタフライと思いつくことは何でもやってみる。そうこうしているうちに次第に海面が近づいてくる。ここまできたらやるしかない。
　可能な限り息を吸い込み、飛び込みの姿勢をとる。今までの人生で間違いなく最も高い位置からの飛び込みだ。海面にぶつかった直後、ザパーンっと大きな音を立てて体は深くまで沈んだ。その後、体勢を整えながら海面を目指して泳ぐ。

「……ぷはぁ」

　海面から顔を出すと呼吸を整えようとゆっくり呼吸をする。周囲を確認すると寝子島と思われる陸地が見えた。ここからだいたい５００メートルくらいだろうか。

「助かったけど、陸まで泳ぐの大変そう……」

　桜は自分の体力を考慮しながら、少しずつ島に向けて泳ぎ始めた。

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