はるか上空から落下中！｜リアクション

はるか上空から落下中！

●いつもそばに

「わあっこれ寝子島だ！　グルグルマップのえーせー写真で見たのとおんなじー！」

　百岳甘桃は目の前に広がる光景に感動の声をあげる。しかし寝子島が近づいてくるのに気づいて、今置かれている状況を察する。

「じゃなくて、落ちるー！　風つよい！　すごいゴーって音する！　わあああああん！」

　もう呑気に寝子島の姿を楽しむ余裕はなかった。声を抑えることもなく、大泣きしながら落下し続ける。甘桃の目からこぼれる涙は上に流れていく。

「誰か助けてー！　このまま落っこちて地面に人型の穴できちゃうのやだよー！」

　ここから落ちた後を想像して悲痛な叫びをあげる。人型の穴ができるだけで済めば、むしろ平和かもしれない。しかし泣き続ける甘桃にそこまで考える余力はなかった。

「アマデトがあれば、ろっこんでおっきくして背中に乗って飛べるのに！　なんで今もってないのぉー……」

　アマデトとは甘桃のカプセルギア『アマデトワール』のことである。その姿は角と翼を持つ馬であり、もしここにあればと願わずにはいられない。こうしている間にも寝子島との距離は縮まり、建物の形がだいぶ見えてきた。

「ぐすん、助けてぇっ！　ママー！　パパー！　くまもも！」

　もはや手は無いのかと泣きじゃくりながらテディベアの『くまもも』を強く抱きしめる。ふと、甘桃はその感触で思い出す。

「あれ？　さっきからくまもも持ってたんだった」

　落ちていく最中で冷静さを失っていたのだろう。甘桃はくまももを抱きしめたまま、ろっこん『ちっちゃく＆おっきく！』を発動する。

「くまもも……おっきくおっきくおーっきくなーれー！」

　できるだけ大きい姿をイメージすると、甘桃の体よりも遥かに大きなサイズになった。そしてどうにか手を動かして落とすように投げた。

「先に地面に着いといてね！」

　巨大になったくまももはその重さに従うように、真下に落ちていった。やがて地図を拡大していくように島の風景が鮮明になってくる。おのずと自分の落ちる場所も見えてくる。それは広場だった。そこに居るのは先に行っていたくまもも。甘桃はそのお腹めがけてダイブした。その体が深く沈むと、その反動で宙に跳ねる。

「やったぁ！　トランポリンみたい！　セーフセーフ！」

　沈んで跳ねてを何度か繰り返しながら、やがて落ち着いた。

「くまもも、さっきは投げちゃってごめんね。おかげで助かったの、ありがと」

　甘桃はそう言いながらくまももを撫でる。

「なんかくまももがどや顔してるみたいだけど、気のせいかな？」

このページにイラストを設定する