携帯戦記カプセルギア　おれがカプギア？！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　おれがカプギア？！

☆ディヴァインセラフ　ＶＳ　ユサールB3カスタム

　シスター見習いの中学二年生キリエ・オーラティオと同級生のPCオタな優等生、若宮菫は、恒例のカプセルギアの練習試合をしていた。
　先日のバトルの後の調整具合も確かめたかったのだ。
　キリエのカプギアは熾天使を模した女性型のディヴァインセラフ。
　菫のユサールB3カスタムは鋭角的な形状が特徴のカプギアだ。
　しかし、気がつけば様子が一変していた。
（わ、私がセラフになってやがるのです！？　と、いうことはあっちにセラフが入ってやがるのですか！？）
　キリエは自分の姿をした存在を見た。
　イタリアからの留学生であるキリエは日本語を一生懸命に勉強したのだが、残念ながら自覚なく口が非常に悪い。
（いつの間にかいれかわってやがったのですっ）
　菫のほうも突然の変異に動揺していた。
（突然視界がミニマムになったじぇい。いきなり僕がユサールになっちゃったねぇ。なるほどこれが転生ですか）
　一瞬そう思った菫だが、見上げれば生きている自分の姿がある。
　転生なら前の人生は終わっているはずだが……
《違うのかいなんだよもぅ。となればすることは決まってるねい、セラフことキリエんよユサールの攻撃耐え切ってみろー》
　あっさり気持ちを切り替え、目の前のセラフにじゃれつくような攻撃をしかける。
《ちょ、こらユサー……ではない、こいつスミレです！　止めろって、言ってるのですっ！》
　三対六枚の天使の羽でふよふよ浮きながら額のクリスタルから高出力レーザーをズビズビ撃つキリエ。
　だが、上手く当たらない。
《ぐぬぬ……にしても結構ダメージが残っているような気がするのです。これは本格的なメンテナンスがいる気がするのです》
　菫も違和感を感じていた。
（む、やっぱこの前の試合で無理した右腕が重いなぁ。がっちりメンテしたのに違和感があるねぇ。でも攻撃はやめない！！）
　けれど違和感以上に、戦いが楽しくてたまらない。
《あはははは！　あやっべこの前の戦闘のダメージ体感でかなりでかいんだね補修じゃ全然たりてないやゴメンよユサール！！》
　いつものカプギアの戦闘ももちろん楽しいけど、自分の身体を動かして戦う楽しさはまた違っていた。
　いつもの頭を頻繁に掻く癖で、鉈のような角を掻きながら叫ぶ。
《同じモノ再びゲッツして取り替えてやるからねぇ！　それが僕なりの感謝ってやつさぁ！！》
　　
　一方、人間の身体になったカプギアたちも戸惑っていた。
（さっきまでユサールと戦ってましたのに、いつの間にか視点が……）
　セラフは小さく見える自分を見つけた。
「ふむ？　私がそこにいるのです。そうなるとこれがキリエの体なのですね」
「むむむ、これは菫の身体では。主の身体で勝手をするわけにはまいりませんな」
　菫に入ったユサールはいぶし銀のオジ様の口調で言う。
《え？　ユサール頭固いなぁ。せっかく人間になったんだしキリエんをむぎゅっとやっちゃったらいいじゃない。あ、今はセラフか》
　戦いの合間にそんなことを言い出す菫。
「いや菫、なぜ逆に勝手をするように、というかしないのを批難するのですかな。正直意味が分かりませんぞ。いやいつものことなのですがな」
　憤慨しているようであきらめ口調のユサール。
「でもヒトの体となったら、いろんなことをしてみたいとは思いませんか？　ユサール」
　セラフもそんなことを言い出す。
「一度紅茶というものを飲んでみたかったのです」
　そういうと、巨大な聖書を置いて茶道具を取り出し、おぼつかない手つきで紅茶の準備を始めた。
「ふむ、元に戻るのを待つ時間潰しに茶をたしなんでみるのもいいかもしれませんな」
　ユサールも手伝って、紅茶を淹れる。
「いただきます……これが、味覚というものですか」
「ほう、なるほど、これはなかなか」
　普段感じない味覚等を堪能してほっこりする二人。

《へえ、ユサールに紅茶が淹れられるとはねぇ。僕も飲んでみたいなぁ》
　菫がつぶやく。
　キリエと菫の戦いはどちらも不調が残っており、膠着状態となった。
　頃合を見て人間の姿のセラフがキリエを抱える。
「キリエ、これからもよろしくお願いしますね」
《な、何あらたまってやがるのですか。……こちらこそなのです》
　そんなキリエの思いが伝わって、セラフは微笑んだ。

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