【期末テスト】赤点？満点？？灼熱、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？灼熱、四日間の死線＜物語編＞

●テスト１日目

＜本日のみやこセンパイ＞

　黒パーカーな黒兎都先輩は国語は得意なようだった。
　社会は時々ため息をついている。地理が特に苦手のよう。
「……まぁちょっとは勉強したし何とかなるでしょ」と呟いている。
　パーカーを脱げば、少し涼しくなって頭も働きそうなものだが、それはしないらしい。

◇

　ところ変わって、２年７組芸術科。
（生徒一同講堂に集まって行うテストはそれは味があってよかったものだが、まあ全教室にクーラーついたのでな。それはあやかろう）
　旅鴉月詠は飄々とシャープペンを指先で回して、試験に臨んでいた。
　とはいえ、どの教科も問題はない。おそらく平均してハイスコア。
　芸術活動の傍ら、きちんと勉強もしているのだ。
　それらもまた芸術を深めるに役に立つ知識なのだと、月詠は考えている。

「それよりもカレーだ。学食のカレーが食べたい」

　カレーフェア。夏こそカレー。
「燃える辛さがヒトを灰（high）にするのである」
　美術のテストは、自由に絵を描く項目があった。
　脳裏には、「ハイハイハイ、灰灰灰、high　high　high！」と手拍子を打ちながら黄色い服に大きな白いターバンの小人たちがナンとカレーな踊りを踊っていた。ハヤシライスもある。その様子を、紙の上に映し描き『カレーを掲げながら踊るマハラジャ達』とタイトルを付けた。
（うむ、我ながら良い出来だ。今すぐカレーフェアのポスターに採用してくれても構わないほどだ）

　次の社会も美術に並ぶ得意科目で、試験自体は難なく乗り切り、月詠は学食にやってきた。
　すると前に並んだのは真っ黒なパーカーのフードを被った小柄な女性。
　シューズのラインの色から察するに先輩だが、それにしても暑苦しい。
「つかぬことを聞くが……そのパーカー、暑くないのか？」
　するとパーカーの主は、振り返るなり言った。
「アッツイ」
「脱がないのか？」
「それはあれ、アイデンティティ放棄なので断る」
「アイデンティティか。それは大事だな。しかし黒は太陽光を吸収する。暑いだろう」
「暑いけど、去年もこれでクリアしたから今年も行けるはず！　あと今年は高校最後の中間ってのもあるからちょっと本気出してるし、心頭滅却すればなんとやらッてことで……」
「なるほど……そういうことならカレーを食すがいい。香辛料によって身体を温め、汗が吹き出し、打ち水のような清涼感を与えるのだ」
「カレーを食すと涼しくなると？」
「うむ、カレーとは……」
　多彩な香辛料が食欲を刺激し、そして肉野菜穀物をバランスよく摂取させる。
　食欲不振、夏バテの予防である。カロリーは高い。
　身体を温めるということは冷え性の予防である。
　クーラーに弱い者がいるだろう？　アイスが好きな人にも……云々。
「カレーを食せば、パーカーを脱がずに試験をやり抜きとおせるのかの？」
「理論上は可能かと」
　よしっと拳を握ると都はさっそく夏野菜カレーを注文した。
　月詠としては、健康上の理論がどうであろうが、都が黒パーカーにこだわりがあろうが、単純に美味しいカレーが食べたいだけである。
「私は定番のチキンカレーかな。甘口で。辛すぎるのは私にはちょいとな。エビカレーとゆうのもあったな」
　カレーフェアは四日間続く。ということは、四種類のカレーを食べられるということだ。
「何にしよう、楽しみだな」

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