合戦、鬼ノ島｜リアクション

合戦、鬼ノ島

侍達の手助けもあり、城の奥にある天井の高い大広間へ到着した。つまり、鬼大将の元へたどり着いたのだ。
　いち早く到着したのは高久だった。
　鬼大将はごつくて黒い鎧、兜を二本の角が貫いている。それはゆっくりと立上がり、高久を睨み付けた。
　高久は刀を構える。
「さあ、勝負と行こうか」
　城内でよかった。野外では不利になったに違いない。
　そう思ったのもつかの間、鬼大将の大口が開き、燃え盛る炎が吐き出された。
　高久は後ろに飛び退き、それを回避するが、鬼大将の周りに炎の円が形成される。
「近づけさせない……というわけか」
　高久は思考を巡らせる。さすがに勢いで突っ込める熱さではないだろう。
　と、天窓の硝子が割れる音がして、外からアケーチが飛び込んできた。
「そこの方、ご無事ですか？」
　アケーチの問いかけに高久は天井を見上げる。
「大丈夫だ。しかし……危ないっ」
　高久が言うが早いか、鬼大将の頭上、アケーチのそばに小さな雷雲が出現する。
「これはっ」
　次の瞬間、雲から放たれた雷が鬼大将の角に落ちて閃光が迸った。どうやら鬼自身は感電はしないらしい。
　どうにか巻き込まれずに済んだアケーチだったが、距離を取るしかない。
「炎を消せれば手もあるが」
　高久の呟きに後ろから気配が。
「わっ、熱っ」
　タルトだった。
「あれが鬼大将？」
「下からも上からも手が出せないんだ！」
　鬼大将のこん棒が今やって来たタルトに向かう。
「ひゃっ」
「下がれ」
　高久は前へ出て、刀でそれを横へ振り払った。
「あ、ありがと」
「ああ。それよりあの炎を」
　と、天井のアケーチが叫ぶ。
「鬼の気を引いてくれれば、私が消しましょう。お願いします」
「それなら、コショウ玉があるよ！」
　タルトは懐からそれを取り出し、天井と地上を交互に見ている鬼大将へ目掛けそれを投げつけた。
「うあがあぁあっ」
　効果は抜群、悶え苦しむ鬼大将。アケーチはその隙をついて、急降下。
「任せて下さい」
　羽をバタつかせ、炎に風を送る。
　みるみるうちにその勢いは収まって行った。
「やったあ」
　タルトが喜ぶも、鬼はその間に回復してしまったらしい。もう一度炎を吐く動作を始める。
「まずい」
　しかし、高久とタルトの後ろから飛んできた手裏剣が鬼の額に直撃。突き刺さった。痛みに声を上げる。
「よかった、間に合った。はぁはぁ」
　後ろから現れたのは桜だった。そしてそのまた後ろから駆ける足音が。
「全員で囮をっ」
　そう告げて三人の横を通り抜け、鬼大将に切りかかったのは志桜里だった。
　タルトと桜もお互い頷いて、加勢、女子三人が四方八方へ跳んで撹乱する。
　高久は鬼に気づかれないよう、ろっこん心の打鐘を発動させ、頭の中に大声を響かせ感覚を鈍らせた。
　それからすぐに兜を外し、
「皆、避けてくれ」
　そう言って、思いっきり投てき。
「がぅ！？」
　鬼がバランスを崩す。
「今ですね！」
　アケーチが言って、全員が刀を構えた。
　高久は倒れ込んできた鬼の胸部に、桜は右横腹、タルトは左肩、志桜里は背中、そしてアケーチは脳天に、それぞれ切っ先を突き立てた。
　鬼大将は目一杯目を見開くと、地飛沫を上げて、その場に倒れこんだのだった。

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