合戦、鬼ノ島｜リアクション

合戦、鬼ノ島

高久は鬼が攻めてくる方角へ駆け出した。手は刀に置く。
「ぐおあああっ」
　案の定、鬼達が襲ってくる。
　近づかれる前に素早くこちらから近づく。
　あっという間に囲まれたが、高久はふっと笑った。
　棍棒を振りかざした小鬼の間合いへ滑り込み、右ストレート。
「ぐはっ」
　振り返り様に腹へ蹴りを入れ、突っ込んでくる鬼の手首をひねり上げ、投げ飛ばす。
「ぐああっ」
　そこでようやく高久は刀を抜いた。
「数が多いな」
　今度は小鬼が襲ってくる。
「避けてっ！」
　どこからともなく聞こえてきた警告の言葉に、高久は横へ飛び退いた。
「たあああっ」
　凄まじい勢いで駆けてきた桜が刀を横に振り上げ、小鬼達の首を飛ばす。
「小鬼は任せてっ」
　桜の言葉に高久は頷いて走り出した。目指すは南にある鬼達の城だ。
「頼む」
　桜は後から後から来る小鬼達を見回した。それらに混じって中鬼が指を指したり、言葉をかけたりして指示を出しているようだ。統率しているらしい。
「あれかっ」
　襲い来る小鬼は無視、中鬼目掛け全力疾走。
「フツウ、覚悟ぉぉっ」
　地面を蹴って跳躍し、中鬼の腹をぶったぎる。
「次っ」
　振り向き様に小鬼を蹴散らすと、中鬼が倒れた影響か連携が乱れ始めた。放置しても、勝手に自滅しそうだ。桜はそのまま高久の後を追った。

　志桜里は辺りを見回し、ふっと息をついた。
「混水摸魚になると信じて、走るとします……いざっ」
　襲い来る中鬼の棍棒を籠手で受け止め、
「っ！　覚悟っ」
　思いっきり刀を振り払い、両腕を吹っ飛ばす。
「あれは」
　ふと見ると、明らかに体の大きな大鬼がゆっくりと近づいてきていた。
　気取られないよう、体勢を低くし、真横から足元へ。ろっこん、ウチデノコヅチを使用しようと拳をつけるも、すぐに気づかれてしまった。三秒はもたない。
　志桜里は後ろに飛び退いて、刀を抜く。
　鬼の巨大な手が降ってくるが、ひらりと交わし、両足の健を刀で十字に切り裂く。
「ぐああああっ」
　加勢しようと近づいてくる小鬼達を踏み台にし、大鬼の周りを跳び回りながら、背中や腕、わき腹、膝を深く深く切りつけてゆく。
「巨体は動かしづらいでしょう？」
　志桜里は静かにそう言って、地面に着地し、鬼と真正面から対峙した。
「うぐぐぐ」
　傷だらけになった大鬼が苦しそうに呻いている。
「もう少し、しかし」
　最終的に首を飛ばしたいところだが、跳躍しているところを狙われたら危険だ。
「忍法、鬼の目にも涙ー！」
　その声と共に鬼の顔周辺に投げ込まれたのは灰色の球体だった。爆発し、粉状のものが拡散する。
「煙玉……？」
　そう思ったのもつかの間、鬼の様子が先程までと変わった。
「は……ハックシューンっ！」
　地響きのようなくしゃみが辺りに響いた。
「コショウ玉命中！」
　駆けてきたのはタルトだった。
大鬼はしきりにくしゃみをしている。
「今のうちに手裏剣を投げるから」
　志桜里はタルトの言葉にゆっくりとうなずいた。
「わかりました」
　タルトはにっと笑って鬼に向かって駆け出した。懐から手裏剣を取り出し、大鬼を囲むように集まってきている小鬼達に次々と手裏剣を撃ち込んでいく。
「よーし、届けー！」
　未だに立ち直れていない鬼の顔めがけ、思いっきり手裏剣を放った。
　コントロール抜群だった。鋭い切っ先が鬼の右目に突き刺さる。
「おおおおおおおっ」
　志桜里は鬼の絶叫を合図に刀を構えた。大鬼の近くにいる中鬼へと走りより、踏み台にして高く跳躍。鬼と目線があった瞬間、刀を横に振り払い、その巨大な首を吹っ飛ばしたのだった。
「助かりました。あちこちで侍達が苦戦しているよう、そこへ参ります」
「うん、気をつけて♪」
「あなたも」
　志桜里が行ってしまってから、タルトは近くの大きな岩の陰に入り、風呂敷を取り出した。

このページにイラストを設定する