破壊の大蛇｜リアクション

破壊の大蛇

「さて。砲丸が通じるかどうかは解らないが……。寝子島は必ず守る。例え相手が誰であろうともだ！」

　寝子島を蹂躙せんと現れし大蛇の化け物ヴリトラ。それを見据え新田亮がそう決意を口にした。
　亮は道中で拾った片手剣とスポーツ用品店で見つけた砲丸を武器にする事を決めている。

「俺の他にも誰かいるみたいだな。余裕があればフォローしたいところだが……っと、来るか！」

　ヴリトラの敵意漲る視線が亮を捉えた瞬間、まるでターボによって加速したかのように突進をしてくる。
　建物だろうと瓦礫だろうと関係なしに吹き飛ばし亮へと向かうその姿の迫力はかなりのものだが、それに臆する事なく亮は軽やかに回避を選択。
　そして、その場を即座に離脱しつつ用意していた砲丸をろっこんを用いて強化した力にてヴリトラの頭へと投擲。

『シャアアアアアアアッ！』

　目等の箇所に命中した砲丸を鬱陶しく思ったのか叫びながらヴリトラはお返しとばかりに氷の弾を口から吐き出した。

「むっ！」

　そんな攻撃があるとは思わなかった亮は虚を突かれた形にはなるが咄嗟にろっこんとその進化能力を発動。強化された動体視力を持って辛うじて躱す事に成功する。

「ふぅ、危なかったな。ただ突進するだけじゃなくてあんな攻撃も持ってるのか」

　そうなると距離を取っての戦いは逆に不利な可能性もあると亮は思った。
　亮自身のろっこんは基本的に接近戦でこそ力を発揮するものだ。用意した砲丸や瓦礫の礫を使えば遠距離攻撃も出来なくはないが、向こうのあの氷の弾と比べると威力に欠けるだろう。
　向こうの氷の弾も連射はしてこない為、多少の制限はあるのだろうが出来れば接近してから攻撃に移りたいところだ。

「神魂の影響で使えるシールドは2回まで。これを上手く使う必要があるな」

　シールドはヴリトラの攻撃を全て防いでくれるらしいので上手く使用する事が出来れば隙を突く事も可能だろうと亮は考えていた。
　やるならばあの突進の時だろうか。相手が自ら近づいて来てくれるあれならば隙を突き易いと考えるのはおかしくはない。

「もし、突進の衝撃まではシールドでどうにかできなくても俺のろっこんを同時に使えば何とか出来る筈」

　そんな事を考えていると丁度亮の方へと再びヴリトラが突進を開始したところだった。

「男は度胸！」

　先程と違い真っ向から迎え撃つ。それがヴリトラにも理解出来たのだろう。突進の速度が更に速くなった。
　亮とヴリトラが交わるその直前。シールドが展開され、亮の咆哮と共にろっこんが発動した。
　力と力が拮抗。まるでスパーク音のような音が周囲に響き渡る。

「らぁっ！」
『ギィッ！？』

　時間にして約5秒間の攻防。シールドが切れるかどうかという瀬戸際に亮はシールドを僅かに斜め下に傾けて角度を変化させ、まるで受け流すかのような形を取る。
　ほんの僅かに流れた力。シールドが消えた瞬間、刹那の距離をすれ違いヴリトラは地面へと落ちる。

「オォオオオオオッ！」

　そこからは亮の一方的な攻撃だ。絶好の機会であるここを逃せば次はないかもしれないのだから全身全霊の力を込めたラッシュである。
　ろっこんである鬼人の体を用いてのシンプルな、それでいて強力な一撃を只管続ける。

『ジィアァッ！？』

　ヴリトラに出来る事はただ断末魔を上げる事のみであった。

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