【星幽塔】　第五階層　あの味わいをもう一度｜リアクション

【星幽塔】　第五階層　あの味わいをもう一度

＞新たな材料

　時間は３時間ほど前に遡る。
　綾辻綾花は早川珪共々、デート中に星幽塔へ召喚された。
（最近、このパターンのような気が……）
　と思うものの、そこまで悪いものではない、と綾花は気にしないことにした。ただ場所が変わるだけなのだから。
　２人はリブラスとトーヤの話を聞き、材料を探しに行く事にした。

　二人がトーヤと向かったのは、拠点から少し離れた森。「案外迷いやすいのでお気をつけて」と、トーヤが心配そうに言う。
「はぐれないように」
　珪から差し出された手を取り、綾花は優しい微笑みで手を繋ぎ仲良く森の中へと入っていった。

「これ、ブドウに似ていますね」
「こんなに綺麗な黄色のブドウは初めて見たよ」
　最初に見つけたのは、鮮やかな黄色の、ブドウっぽい果物だった。トーヤ曰く、皮に癖があるという。
（そういえば『聖水酒』も癖があると聞きました）
　綾花は件の飲み物の試作品に使っているかをトーヤに問えば、まだ使っていなかったのと、トーヤ自身も興味を持った為採取していく。
　トーヤ曰くこの森には様々な果物やハーブ、薬になる樹液などが種類豊富にある為、まだ試していない物も数多く存在するらしい。
「何か見つけたら、まずアレクトロさんに確認してもらうのが良さそうだな」
　珪の提案に、綾花は「それがいいですね」と頷いた。

　森の中で、空色の木の実を見つけた時は安全性を確認したうえで「はい、あーん♪」と綾花が珪に食べさせたり、高い所にある花を二人で協力して取ったり、としているうちに森の奥へと来ていた。
　大きな木々がまばらにあり、程よく開けている。それだけではなく近くに沢があるのか水の音が聞こえてくる。話によると水源があるそうで、森に住む人々やキャンプをする冒険者等が汲みに来るらしい。
「この辺りは薬草やハーブがよく取れるんです。程よく光が差し込みますし、日陰になるような洞もありますから」
　トーヤは「足元に気を付けて」というと、材料なのだろう、大きな木の根元を掘り始めた。
「これはアケビ……にしては大きくないか？」
「そうですね。でも、なんかこう、いい匂いがします」
　二人が見つけたのは、人の腕ほどの大きさもあるアケビのような実。見た目は普通のアケビだが皮がより美しい青紫であった。
（これは既に使っているのでしょうか？）
　幸い簡単に採取でき、それをトーヤに見せる。と、彼曰くまだ使っていない物であった。
「これぐらいあればいいかもですね」
　トーヤの言葉に従い、材料集めはそこで終了となった。

　拠点に戻ると、３人の冒険者がそこを訪れていた。
　綾花と珪は一旦靴やマントについた泥や草の種を落とす為と採取した素材を洗うため井戸へ向かう。
「……私は、作るお手伝いもしたいと思うのですが、珪さんはどう思いますか？」
「いいと思うよ。やろう」
　綾花が希望を言えば、珪は笑顔で頷く。
　彼曰く、綾花ならそう言うだろうと考えていたらしい。綾花は考えが読まれていたことに驚くも、なんとなく嬉しくなった。
　トーヤにそのことを伝えれば、彼もまた嬉しそうに「ありがとう」と二人に協力を仰ぐことにした。

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