【海開き】賑やかな夏のはじまり｜リアクション

【海開き】賑やかな夏のはじまり

　佐和崎紗月は緋色の煌めきを放つ海に目を奪われた。麦藁帽子の鍔を大きく上に押し上げた。
「急に立ち止まって、どうしたのよ」
　先を歩いていた初瀬川理緒が小走りで戻ってきた。隣に並んで同じ景色を眺める。
「少し寂しい気分になったのかも」
「今日が終わるから？」
　紗月は微笑む。力なく頭を左右に振った。
「私達が高校生として海で泳げるのは今年が最後なんだな、って思ったら……」
　紗月の瞳に薄っすらと涙が溜まる。理緒はセミロングの黒髪に手を回し、自身の肩に引き寄せた。
「来年はさ、あたしたち女子大生になって、海開きの日にまたこうして遊び倒したいよね」
「来年だけ？」
　肩から甘えたような声が小さく問い掛ける。
「再来年も、そのあともずーっとね！」
「うん、ずっと一緒に」
　どちらともなく指を絡ませて、いつまでも海を眺めていた。