寝子島のお店｜リアクション

寝子島のお店

　佐藤瀬莉は学校が終わり、本来であればそのまま自宅に帰るものなのだがどうにも今日はそれではつまらないと思い、シーサイドタウンを適当にぶらつく事にしていた。
　まずはアンティーク時計の店にでも行ってみようかと思っていると、そこへ行く途中で駄菓子屋「つばさ」の前に差し掛かったので、ちょっと立ち寄ってみる事に。

　時折瀬莉はこの店に寄る事があるのだが、ごくたまにこの店の店番をしているキラッキラしているお兄ちゃんがキラッキラしている自分のお手製トレカを勧めたりするけど、どうやらそのお兄ちゃんは今日はいないようであった。
　どうにも瀬莉はこの駄菓子屋に寄るとついお小遣いを無駄遣いしたくなる気にさせられていた。

　今日だってべっこう飴を買って、うめえ棒にチョコなども食べていた。
　この時に注意しなければならないのは清算の際に出すお金だ。瀬莉の財布の中には常に10万円くらいが入っていたりするので、こんな個人経営のお店でもうっかり1万円を出しそうになっていたりするのだ。
　当然ながら、その気になれば大人買いとて平然と出来るだけの財力はあるのだが、瀬莉にそういうつもりは毛頭ない。彼女からすれば店にはその店にあった楽しみ方というものがあり、この店でそんな事をすれば白けてしまうだけだと理解しているのだ。

「カプセルギアかぁ……」

　様々なお菓子を買っては堪能した瀬莉の目に前にあるのはカプセルギアのガチャだ。
　携帯戦記カプセルギア。それは最近話題のカプセルに入ったロボットを自分のスマートフォンで操って遊ぶというおもちゃだった。
　この寝子島の子供の間でも話題になっており、カプセルギアで遊んでいる事は日に日に増えている。

「最近流行ってるみたいだけど、ちょっとやってみようかな」

　丁度先程まで駄菓子を買っていた事もあって小銭も出来ている。だから、瀬莉は目の前にあるそのガチャに硬貨を入れて回してみる事にした。

「へぇ、なるほど。こんな風になっているのね……」

　カプセルギアのガチャを回して出てきたのは当然ながらカプセルだ。その中に小さなロボットが入っているのだ。
　勿論、このロボット1体だけでも既に遊ぶ事は出来る。しかし、これだけではまだほんの入り口に立ったに過ぎない。カプセルギアの真髄とは他のロボットについているパーツを組み合わせて自分だけのロボットを創り出す事にあるのだから。

「ふんふん。あ、簡単に各パーツが外れるのね」

　瀬莉は説明にある通りに手に入れたロボットのパーツを外してみていた。特に難しい事はなく、小学生である彼女でも簡単に行う事が出来る。
　そうとなれば、組み合わせる為に他のロボットも手に入れてみる必要があるだろう。
　
　幸いな事に小銭はまだまだある。ある程度回す事は十分にできそうであった。
　そうして、ガチャを回していると瀬莉は何故、このカプセルギアが人気なのか何となく理解出来てきた。こう、心がワクワクするのだ。どんなロボットが出るかなと。

「家に帰ったら色々と組み合わせてみようかな？　それで学校に持って行ってみよう」

　自分だけのロボットを創り、そして、それで友達と遊ぶ。
　あぁ、それだけで何とワクワクする事か。今から瀬莉はカプセルギアで遊ぶのが楽しみになりつつあった。

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