本日は臨時休業で｜リアクション

本日は臨時休業で

●イメージガールの過ごし方

　カメラマンの彼は撮影の仕事で地方に行っているので、一緒に過ごせない。残念だが仕方ない。
「久しぶりに、おひとり様で適当にぶらついてみようかな。たまには、いいわよね」
　城山水樹は木天蓼大学寝子島キャンパスを出て、アウトレットへ行くことに。
　キャンパスを出たところで、並んで歩く葉月朱真と古苗木美姫に会った。
「城山さん、講義はどうしたんですか？」
「臨時休講になってしまったの」
　教授の都合で、と美姫に事情を話す。
「それじゃあ、休講になっても仕方ないな。この後、どうするんだ？」
「アウトレットに行こうかと思うの」
「そうですか。楽しんできてくださいね」
　水樹と別れた美姫は講義を受けると社会学部の講義室、朱真は工学部の研究室棟へ。

　アウトレットに向かいながら、水樹は何をしようか考える。
　ここですることは基本的にはウィンドウショッピングだが、気に入ったものがあったら、適当にいくつか買うつもり。
　ショッピングをしている間、自分へ視線が集中しているような気配を感じた。
　手にした服を見て、買おうかどうか悩んでいる時は、小声だが「あの人、「Sonora」イメージガールの城山水樹じゃない？」という女の子達の話し声が聞こえた。
　イメージガールになった当初はすごく注目されているような気分だったが、今ではもう慣れてしまっている。
　いつも以上に注目されているのは、どうしてなのかしら？
　その理由は、アウトレットのコスメコーナーに貼られていた水樹のポスターを見てわかった。
（今日に限って注目されていたのは、これが原因かもしれないわね……）
　注目されるのは悪い気はしないが、せっかくのオフの日だけは、少し勘弁してほしいと思った。

　アウトレットでショッピングをしていたが、特にめぼしいものが見当たらなかったので外へ出て、別の場所に行くことに。
　移動中、常に周囲の注目の視線を感じたが気にせず、次はどこにしようかと考える。
　その時、水樹は自宅である参道商店街の古本屋の近くに、和風カフェがあることをふと思い出した。
「ここしばらく行ってないなぁ………」
　考えるより先に、彼女の足は自然と参道商店街に向かっていた。
　お目当ての和風カフェに辿り着くまで、そんなに時間はかからなかった。
　さっそく入りましょう、と店内へ。外を見ながら食べたいので窓際の席へ。
　テーブルに置いてあるメニューを開き、何を注文しようかと迷う。
　カフェ定番のメニューから、今年の夏の新メニューが取り揃えられている。
（夏のメニューどれも涼しげで美味しそう……でも、調子に乗って食べたら職業的にまずいわ）
　メニューの誘惑に負けそうになりつつ徹底的に厳選した結果、アイスグリーンティと琥珀糖を注文。

　店員が運んできたのは、ガラスのコップに淹れられたアイスグリーンティーと白いお皿に盛られた琥珀糖。
　寒天と砂糖で固めたものを乾かし、表面の砂糖を結晶化させた琥珀糖はキラキラ輝く宝石のようだ。
　食紅で色を付けた琥珀糖を口に含むと、外側はシャリシャリ、内側は柔らかくトロッと軽い食感が。
「美味しい……ルビーみたいで綺麗だわ」
　口直し、とアイスグリーンティーを一口。歩き回って暑くなってきたので、冷たい飲み物で喉を潤す。
　色とりどりの琥珀糖とアイスグリーンティーで、水樹は身も心もすっかり癒された。

　会計をすませ、お店を出た水樹は「次はどこにいこうかしら？」と歩きながら考える。
　レジカウンター横に置いてあった籠に入っていた琥珀糖の詰め合わせ袋を、手に持ちながら。

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