本日は臨時休業で｜リアクション

本日は臨時休業で

●お店番栗鼠獣人の過ごし方

　チェス・ブルームは、お菓子作りの用意を張り切っていた。
　お店は休みなので、同居人が帰ってくるまで自由に過ごせる。
　２階の住居スペースに上がると、お菓子の材料があるかチェック。
　足りない分は買い出しに行くしかないが、他のお店も臨時休業でお休みかも。
　念のためにと他のお店が開いているか見に行く。多くのお店は、箒と魔法具のお店同様、臨時休業だった。
「これでは買い足せませんね。ある分だけで作るしかないでしょう」

　帰宅して材料をチェックすると、買い足さなくても十分なほどあった。
「買い足さなくてもいいので助かりました。これで木の実のパウンドケーキを作りましょう」
　ベースとなるパウンドケーキにはくるみを入れ、その上にはナッツ類をたっぷりなものに決定。
　これ以外にも、もう１品作れるくらいの材料があるので、他にも何か作れそうな気がした。
　ケーキを作る前に、まずかまどの予熱。その後はバターを常温で溶かし、卵を別の容器に。
　くるみを細かく刻んだり、バターと卵に混ぜる粉をふるったりと、やることは多い。
「バターが余ったら、ドライフルーツを入れたケーキも作りましょうか。それとも、あの人が好きなクッキーがいいですかね？」
　同居人はどんぐりクッキーが好きなので、もうひとつ作るならそれも……と思った。
　そんなことを考えながら、作業の手を休め、たまに乗せて焼くはずのナッツをつまみ食い。
　木の実類が好物なので、つい、食べてしまう。
「誰かのために何かを思いながら作業するのは楽しいです。やっぱり、僕はこの生活が好きなんですよねー」

　バターと卵が使えるようになったので、ボウルに卵を割って入れ、溶き卵を作り始める。
　別のボウルにバターを入れ、泡立て器で空気を含ませるようにクリーム状に練り、それに砂糖を数回に分けて加える。
　その都度、良く混ざるようにと、しっかりと混ぜていく。
　ふんわりするまで混ぜたら、先ほどの溶き卵を分けて入れ、よく混ぜたら牛乳を追加。
「パウンドケーキを作るコツは、粉を混ぜる前に、とにかく泡立てることです！」
　しっかりと空気を含ませて泡立てる。そうすることでボリューム感が出て、口当たりもふんわりとした生地に仕上がる。
　パウンドケーキの作り方を教わった人が、そう言っていたのを思い出しながらチェスは一生懸命混ぜる。
　ほどよく混ざったところで、ふるった粉を投入。
　ヘラでさっくりと混ぜ合わせたら型に流し入れ、表面をきれいにならしてから中央に縦長のくぼみを作る。
「表面にくぼみを作るのは中まできちんと火を通すため。焼き上がり時に、きれいな位置に割れ目が入るようにするです」
　覚えた作り方を復習しつつ、かまどの前に座り、ケーキが焼き上がるのをじっと待つ。　
　上手く焼けるといいですね、と期待しながら。
「……カロリー控えめのお菓子も作っておくべきですかね……？」
　カロリーが高いと太ると警戒して、同居人が食べるのを遠慮するかも……と思うと少し不安に。
　バターと卵、粉といった材料が余ったので、カロリー控えめのどんぐりクッキーも作ろうと立ち上がる。
　美味しくなりますように、と思いを込めながら、クッキー生地を作るチェスはどことなく楽しそうだった。

　どんぐりクッキーが焼き上がると同時に、同居人が帰ってきた。
「おかえりなさい。パうンドケーキとクッキーを作りました。一緒に食べませんか？」
　どれも美味しそうだと感心する同居人だが、カロリーが高いと太ることを警戒し、お菓子とにらめっこする。
　そんな同居人を見て、チェスは可愛い一面もあると微笑む。