Once Upon a Time？｜リアクション

Once Upon a Time？

◆たまには上下合わせて

　華やかな装飾で彩られた店内には、評判を聞きつけた女性客や、神魂の影響で惹きつけられてやってきた男性客まで居て、かつてないほどの賑わいを見せていた。店員もまた忙しそうにあちらこちらへ動き回っている。そんな中、白真白は他の客に押されたりしつつ、店へと向かって行った。体格に恵まれた客にどんっと押されると、その衝撃で小柄な彼女は数歩よろめいて、それと同時に大きな胸をどどーんと揺らす。

（やっぱりこのブラ、もうきついなあ）

　真白はこんなことを思いながら、体勢を立て直した。買い換えてそう経っていないはずなのだが、胸部は彼女の都合を考えずにずんずんどんどん大きくなっていく。真白は渋々と新しい下着を買いに来たのだった。
　下着屋を冠するだけあって、どこを見ても女性用下着が並んでいる。どの下着にしようか、そもそも自分のサイズに合うものはあるのかと、真白はあれやこれやと手に取っては悩んだ。そうしているうちに、真白はふと、あるものに目を奪われる。

「ん？　新発売の下着？」

　彼女の視線の先には『童話ランジェリー』と書かれたポップと、ずらりと並んだそれがあった。真白は並んでいるそれを見てみて、そのデザインに瞳を輝かせる。

「へ～、すっごい可愛い！」

　そうして、いくつか見てから、

（うーん、今日は上だけ買うつもりだったんだけどなぁ）

　と考え溜息を吐いた。

（ショーツは使うことないし……）

　ある事情からショーツを着用しない彼女は、今日もブラジャーだけを買うつもりだった。だったけれど、手に取ったそれらは全て上下セットで一つのデザインとして成り立っている物である。彼女は悩みに悩みつつ、

（でも可愛いし買っちゃおう！）

　と決めた。着なかったとしても、見ているだけでも楽しいものは楽しい。彼女は今度はどれにしよう、と迷いつつもいくつか手に取った。

「試着していかれますか？」

　とちょうどその時、桜色の髪を靡かせた店員――胡乱路秘子が真白に話しかけてくる。真白は元気よく

「はい！」

　と答え、準備した。

「何かありましたら、こちらのボタンを押してお知らせください♪」

　秘子はにこにことそう言って、真白を試着室の中へ案内する。真白は早速服を脱ぎ、手にした下着を試着してみた。赤と青のコントラストが鮮やかな白雪姫のランジェリーも、爽やかな青色のシンデレラのランジェリーも、真白の肌によく似合う。

「これいいなあ」

　と、鏡を見ながら、真白はくるりと一回転する。それで、満足するとまた次のものを試してみて、

「あ、こっちもかわいい」

　と言った。秘子はたびたび試着室の中を覗き込む。

「店員さん、どうです？　似合ってます？」
「ええ、とても似合ってます♪」