６月の魔法｜リアクション

６月の魔法

●エピローグ

　頬に優しい感触がした気がして、浮舟久雨は目を覚ました。すぐ傍には、畑生言嗣の顔。穏やかな瞳で久雨に寄り添い、彼女を見つめていた。

「おはよう久雨君、良い寝顔だったよ」
「とき……つぐ？」
　ぼんやりとする頭で久雨が呟く。しかしすぐにハッと起き上がった。
「すまん言嗣、もう帰ったのか！　どうやら私は寝ていたようだ」
　言嗣に傘を渡してから家事をした記憶がない。掃除……いやいやそれより夕飯だ！
　愛しい夫にひもじい思いをさせてはいけないと立ち上がりながら久雨はエプロンの腰紐を結び直す……直す……？
　手がすかすかと腰から落ちる。見れば自分はエプロンなど着けていなかった。
「焦ってどうしたのだい？　何か夢でも？」
「―――夢？　なっ、そっ……！？」
　言嗣の言葉に、驚いて久雨は周囲を見渡す。そこはいつもの桜花寮の自分の部屋で。あれは……言嗣との暮らしは夢だったのか？
　まだ信じられないという顔をしている久雨に、言嗣は微笑みかけた。
「悪い夢ではないのだろう？　君の寝顔は楽しそうだった。目覚めが良くないならハーブティでも用意しようか？」
「うん……確かに悪い夢ではなかった。どちらかと言えばその、幸せな……？」
　そう言いかけて久雨は赤くなった。本人を目の前に何を言ってるんだ私は。いや、あれが夢なら言嗣は知らないはずだ。そう、あれは私１人の夢―――。
　あれこれ考えている久雨を、言嗣は楽しそうに見ている。するとふと久雨が訝しげな目を向けた。
「……待て。ここは寮の、私の自室だが、何故貴様が居る」
「君のいるところ、そこが私の居場所だからね。私は常に傍にいるよ」
　飄々と言い返す恋人に二の句が継げなくなり、久雨は首を捻りながらまたソファに座り直した。鍵をかけ忘れていただろうか？　むぅ、記憶が曖昧だ。次からはしっかり確認せねば。
　そんな彼女の横でその髪を弄んでいた言嗣は、ふと顔を上げると呟いた。
「だが私も先程不思議な夢を見ていたね。……とても幸せな夢だったよ」
「言嗣も夢を見たのか？　どんな夢だったんだ？」
　興味深そうに振り向いた久雨の頬を、言嗣は掌でそっと包み込んだ。
「その夢で私は忘れ物をしていてね」
「ええっ？！　も、もしかして……傘か？！？」
　驚き慌てる久雨に、言嗣は悪戯っぽく笑う。そして顔を近付けながら言った。
「……行ってきますのキス」

　６月の魔法。
　また風がふわりとレースのカーテンを浮かせ、幸せな恋人達を包み隠した。

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あとがき

担当マスター：ＫＡＮ
ファンレターはマスターページから！

ＫＡＮです。
ご参加の皆様、ありがとうございました！

＊＊＊＊＊
（アクションが届く前の私）
「ふふふ、皆様のアクションにシュガーボムいっぱい足しちゃおう♪」

（アクションが届いた時の私）
「え？　ちょっ、ま？　これ伝説のスーパーシュガーボムやないの？　それもこんなにいっぱい……え、え、いやあぁぁぁぁーーー！」（爆死）
＊＊＊＊＊

……以上でございます。
こ、今回はこれくらいにしてあげるわっ！　次回覚えてなさいっ！！

なお、今回個別コメントはありません。

・大なり小なりアドリブと心情描写を足しております
・女性ＰＣで必要な方は結婚生活の時は登録ＰＣ姓を旧姓扱いにしました

これをもちまして個別コメントと代えさせて頂きます。
のんびり稼働中ではありますが、また皆さんにお会いできること、楽しみにしています～！

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