銭湯『杜の湯』～雪乃先生２時間足止め大作戦｜リアクション

銭湯『杜の湯』～雪乃先生２時間足止め大作戦

●脱衣室の先客

　樹が島岡先生と出会う少し前。
　ちょうど『杜の湯』に来ていた御巫時子は脱衣所に着いたところでミラの声を聞いた。

「雪乃先生が大変なことになるんですか？　それは困りましたね」

　どうしようかと思っていると、先生と樹が脱衣室に入ってきた。
　時子は２人に近づくと声を掛けた。

「こんにちは。雪乃先生と銭湯でお会いするのは珍しいですね」

　島岡先生も軽く挨拶を返す。
　それから脱水予防のために、時子は島岡先生と樹に水を勧めて、自分も飲む。

「先生はメガネ無くても大丈夫ですか？　見えますか？」
「大丈夫ですよ」

　そんなやりとりをしながら服を脱ぎ、タオルを持ち女湯へ入っていく。
　浴場には見事な壁画があり、さりげなく猫の絵も描いてある。そして何人か先客が居た。
　伊藤佳奈もその１人だ。偶然自宅の風呂の調子が悪くて銭湯に来ていたところ、急にミラの声が聞こえてどうしようかと思案をめぐらせていた。

「あ、島岡先生、こんにちは！」

　と、ひとまず挨拶。島岡先生は剣道部の顧問なので声はかけやすい。
　湯船に浸かる前に体を洗おうとする先生のそばに座る。時子と樹もその近くに座った。

（どうやって時間を稼ごう……）

　佳奈は体を洗いながらその方法を考えていた。するとふと先生の胸が目に入った。近くにいる樹も先生の胸を時々眺めていた。

（確かに男性が見とれるのも分かるなぁ。それに比べてあたしの胸ときたら……）

　無意識に自分の胸元に視線が移る。そこには慎ましやかな膨らみがあった。ふたたび先生の膨らみに目をやる。
　その大きさの差に思わずネガティブになりかけたので頭を振ってその考えを追い払う。

「えっと、胸が大きいとやっぱり肩が凝りやすかったりするんですか？」
「そうですね」
「そういう時はやっぱり体幹を鍛えて正しい姿勢を心掛けるといいですよ。そしたらほら」

　そう話しながら滑りやすい床のタイルの上で、ふらつくこと無く片足でクルクル回って見せる。

「こんな事もできるし、肩も凝り難くなりますよ。あたしのお母さんも正しい姿勢を保つ体操してるから、あまり肩が凝らないって言ってるし」
「そうなんですね。でも、ここで回るのは危ないですよ」
「はーい」
　
　先生にそう言われて佳奈は座りなおす。
　それぞれ体や髪などをさっと洗い終えると、湯船に浸かり、思い思いに体を伸ばす。
　時子が先生に話しかける。

「先生は、銭湯はよく来られるんですか？」
「たまに来るくらいですよ。こうして浸かるのが気持ちよくて」
「わかります。気持ちいいですよね」

　そんなことを話しながら銭湯を楽しむ一同。先生は時子に連れられてサウナやでんき風呂に入ったり、とりとめのない話を楽しんだ。
　そして先生が風呂から上がろうとしたとき、樹がのぼせてバランスを崩した振りをしてその豊満な胸目掛けてダイブした。
　さらに気づかれない程度に胸を揉んでいる。

（かつて母の胸に抱かれた癒しの感触を再び味わうのだ！）

　とはいえ、無理は良くないので脱衣室に来たら扇風機に当たって体を休める。
　先生はその様子をしばらく見ていたが、ひとまず大丈夫そうなので、髪を乾かし始める。
　時子も乾かすが、髪が長いのでどうしても時間が掛かる。

「先生のように短いのも憧れますね」
「えっ、あっ、でもその長い髪も素敵ですよ」
「ありがとうございます。先生は小さい頃からショートですか？」
「そうですね」

　先生は髪を乾かし終えると改めて樹のそばにきて声をかける。
　樹は少し顔色が赤くなっていたが、もう問題なさそうだ。水を少しずつ飲むと、だんだん落ち着いてくる。それを確認すると脱衣室から全員出た。

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