中学生も、明日のためにペンを持て！｜リアクション

中学生も、明日のためにペンを持て！

○テスト前日

　テスト前日。
　寝子中２年の輝楽弥生は旧市街の自宅で気合を入れていました。
「スケッチブックは封印して明日のテストの為に今日は猛勉強やで」
　この春弥生は、親の離婚を機に関西から父と姉と共に旧市街で定食屋さんをやっている父方の祖母の家に引越してきたのです。
「テスト勉強は苦手やけどパパには芸術活動に熱中するんやったら勉強と両立しなさいと言われとるし……」
　絵を描くのが好きで放課後のスケッチが習慣になっている弥生ですが、さすがにこの期に及んでのんびりしてはいられません。
「寝子高の芸術科に入るためにも頑張らなあかんな」
　テストの日程を確認します。
「1日目は国語と数学と理科かぁ。美術以外の勉強は苦手やし特に理数系の科目は苦手やねんな」
　そんなことを考えていると、玄関の戸が開く音がして声がしました。
「ただいま」
「あ、パパや。数学は1人じゃ勉強出来ひんしパパに数学教えて貰おう」　
　さっそく弥生はパパにお願いして教えてもらうことにしました。

「うーん、マイナスの引き算やからプラス？　ここ約分できるん？　脳みそがパニックや」
　パパに数学を教えてもらいながらテスト勉強をする弥生ですが、教わっても難しい物は難しく、苦戦しています。
「なんや、甘い匂いがするな」
　と思ったら、おばあちゃんが顔を出しました。
　手にしたお盆に、弥生の愛用しているマグカップが乗っていました。
　これが甘い匂いの元だったようです。
　弥生はたちまち笑顔になり、机に置かれたカップを覗きました。
「ホットチョコレートや。マシュマロも浮かんどる」
　両手にカップを持って香りを楽しみ、さっそく口をつけます。
「甘い……テスト勉強で疲れた脳みそにチョコレートは心強いなぁ。おばあちゃんありがとう」
　おばあちゃんはにっこり微笑んでくれました。
「チョコレートドリンクのおかげでもう少し勉強頑張れそうな気がするで」
　弥生は元気を取り戻し、勉強を続けました。

　旧市街の自宅、自分の部屋。
　中学３年の仙藤蒼は、この時間普段ならゲームで遊んでいるかゲーム実況配信をしているはずですが、さすがにテスト前なので勉強に励んでいます。
「明日は得意な数学と理科だから、簡単に予想範囲を復習しておこう」
　根っからのゲーマーでゲーム三昧な蒼ですが、成績は意外に悪くありません。
　頭の回転が非常に速く、何事もとことんやりこまなければ気が済まない性格
「国語の方──特に国文法を中心に勉強しておかなきゃ」
　国文法は少し苦手な蒼です。
「えーと、連体詞に補助動詞……」　
　しばらく頑張った蒼ですが、少し集中が途切れました。
（あー……ゲームしたくなってきた）
　何だかうずうずしてきました。
　目を移せば、すぐそこにゲーム機が。
「ほんのちょっとなら……いいよね？」
　などと言いつつ、蒼の手はじりじりとゲーム機に近づいて……
　あと少し、というところで蒼はハッと我に返りました。
「あーダメダメ！　今は我慢我慢！」
　そう言って慌ててゲーム機から離れ、再び机に向かうのでした。
　

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