携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『ダンサーズ・デッドエンド』

結：靄がかった終焉

　戦いは決した。
　ギアと絆を結んだ子供たちによって、３体のギアは敗れたのだ。
「これだ……。これこそが、私の追い求めている力……」
　歪屋　チヒロは、興奮した様子でそう呟く。だが、それを聞き取れたのは……、なんとなくチヒロを見ていた尾花ひよどりだけだった。

＊＊　＊

　静まり返る会場。その中で、拍手が聞こえた。パソコンの前にいたチヒロは、席を立つと満足げな様子で子供たちに向き直った。
「楽しかったよ、諸君。……私は、こんなに清々しい負け方をしたのが久しぶりだ。これでまた、私の研究は捗る」
　その言い方に、なにか腑に落ちない物を覚えたスピカ・フォーツと鷹司凜太郎は顔を見合わせる。
（どういう事……？）
（とりあえず、最後まで聞こう）
　二人は頷き合い、よりそってチヒロの様子を伺う。と、チヒロはご機嫌な様子で子供たちを見渡している。
「君たちの勇気と策略に、完敗したよ」
　そういって、チヒロが指を鳴らすと、どこからともなくワゴンを押した老執事が現れた。そこに積まれていたのは、宝石をあしらったパーツやら、LEDライトが仕込まれたパーツやら、子供のお小遣いで買うにはいささか高すぎるパーツだ。
「これ、本当に……？」
「あぁ。私に勝利した者への賞品だからね」
　柚瀬玲音が不思議そうに問い、チヒロは頷く。集まった子供たちは、そのきらびやかなパーツの山にしばし悩む。
「……うーん、俺はいいや」《自分たちは、遠慮するであります》
　陸堂源次はきらびやかなそれらに首を振り、ダイバーも頷く。一方、鈴島クミは何か手掛かりになるかも、と思いパーツの入った箱をのぞき込んでいた。
「ガラクタくん、どれがいい？　あー、ノーコメントだよねぇ……」
　と、首をかしげるST93とほのぼのするやり取りを見せながら。
その傍ら、キリエ・オーラティオに肩を借りた若宮菫は「それよりも冷たい飲み物が欲しい……」と弱々しい声で呟き、執事から冷たい紅茶をもらっていた。
「ったく、無茶しやがるからですっ！」
　キリエが心配そうに菫を椅子に座らせる。彼女は苦笑し
「でも、僕ぁこの勝利が嬉しいし、バトルには満足してるんだよぉ」
　と楽しそうに囀った。
「うーん、使いどころがむずかしい」
「でも、記念品にいいかもね～」

　煌白燕がスワロフスキーのデコレーションがついたパーツを手にとって首を傾げ、新田樹もまた楽し気にLEDライトで輝くパーツに興味をもっていた。
「俺は、別の物を求める」
　そういったのは、タイラ・トラントゥール。彼はチヒロに歩み寄るとしっかりと顔を上げた。
「何をお求めで？」
「情報だ」
　タイラの言葉に、チヒロは「そうか」と思案すると……ぽん、とタイラの頭をなでた。
「なっ！」
「君たちのギアバトルは録画してある。後日、編集してブルーレイディスクかDVDにして差し上げよう。それでいかがかな？」
「そうじゃない！　お前たちに関するものだ」
　タイラがいら立ちを押さえながら言えば、チヒロは静かに頷く。
「これは、ギアバトルの研究の一環だ。……最近、ギアが話し、自分で動きだすようになったと聞いてね。それでより連携をとってくるギアマスターがいるのではないか、と考え、この＜デッドエンド＞を開催していた」
「本当に、それだけなのか？」
　タイラが疑わしそうに見つめるが、チヒロは「それは君が推理することだ」と意味深な事をいうだけだった。
「なんか、いやーな感じがするです」
　あほ毛を揺らしながらむすっ、と言い放つひよどり。ヒョードリもうんうんと頷くも、チヒロは不敵にほほ笑むだけだった。彼女は、一通り答えたな、と確認すると……ふう、と大きなため息を吐いた。
「さて……、私自身もケジメをつけないとな」
　と、言うチヒロの元にαたち３体がよろよろとやってくる。その言葉で何かを悟ったのか、クミと環的子の２人とそれぞれのギアが駆け寄った。
「自分のギア、壊しちゃだめだよ」
「そんなこと、やめて下さい。それなら私がもらいますっ」
　あくまで平静を保って話すクミと、凛と言い放つ的子。二人に、チヒロの手が止まる。だが、そこで一歩出たのはαだった。
《君たちが、チヒロに意見するな。マスターは、最初から私たちと約束していたのだ》
《子供たちのギアを壊すのだ。ならば、己が負けたならばそうせねばなるまい》
　γが続けるように言えば、どうして止める？　とでも言いたげなまなざしでβ＆Θが２人を見上げる。

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